W2×1　【MiyabihimeA】

　繰り返される作戦行動は素早く、それ故に集まったエージェント達のレベルの高さは一目瞭然だった。スイーパー側はデュオの選抜したメンバーなので、普段は小隊を率いている連中である。プリベンターも、五飛やトロワが認める実力の持ち主ばかりを差し向けていた。レディ・アンの気遣いだろう。
　先日の任務でヒイロが傷ついたことに、責任を感じているのかも知れない。政府直轄の情報組織でありながら、薬品の件はもちろん・・テロリストの情報に至るまで、すべてにおいてＬ２のスイーパーに負けている現状。それはエージェント達の生存率に影響するのだから。
　ちらりと視線で促され、１人のエージェントがゆっくりと顔を覗かせた瞬間―――
「伏せろッ！」
　突然大声で叫ばれ、咄嗟に顔を地面へ擦り付ける。すぐ上を通過した銃弾の気配に、背筋をゾッと冷たいものが流れた。叫んだ五飛が冷静に銃を構え、少し先のビルへ向けてトリガーを引く。
　銃声はパンと軽い音で響いた。
　ドサッと何かが落ちる。それが撃たれた人間なのだと、口にしなくても誰もが気づいていた。すでに相手に感づかれているのなら、身を隠して近づく必要はない。
「行くぞ、散開しろ」
　手短に指示を出し、真っ先に駆け出していく黒髪のエージェントに、慌てた様子の部下が後を追った。元から先陣を切ることが得意な五飛のこと、派手に銃撃戦を繰り広げる。
　１人、２人・・・減っていくテロリストを数えながら、遠くで響いた銃声に意識を傾けた。方角から言って東側を担当したトロワの班だろう。無口だが腕は確かなトロワも、部下から厚い信頼を得ている。
　心配する必要がない相棒を思い浮かべ、五飛は口元を笑みで歪めた。

　静かに無言で・・しかし確実に指示を出すトロワの元、部下は散らばって銃撃戦を繰り広げていた。五飛についたメンバーはプリベンターのみ、トロワの班はプリベンター２名とスイーパーから１人が合流している。
　パンッ、確実な射撃でプリベンターの援護に入っている男を見つめ、トロワは満足そうに頷いた。先走る傾向があるプリベンターの２人は双子で、似たような性格なのか、攻めに転じると同時に飛び出してしまう。どちらかがフォローに回れば問題ないのだが、そんな配慮はないらしい。
　幸いというか・・・彼ら２人の実力は上級クラスなので、今まで生き残って来られたが。今後もそうとは限らない。それ故にこの２人のフォローは、いつも全体に目配りが出来るトロワを当てられることが多かった。
　しかたなく彼らのバックアップに回る気でいたトロワより早く、スイーパーから派遣されたエージェントが動いている。目端の利くジャックの活躍に、思ったより楽に進められそうだと目を細めたトロワは、視界の端にチラついたテロリストへ遠慮容赦なく銃弾を撃ち込んだ。

「さてと・・・まずはNPS507を探さないと」
　小声で呟いたデュオの周囲で、３人は顔を見合わせる。くすくす忍び笑いを漏らす彼らの姿に、緊張感は欠片もなかった。
「こら、ちゃんとやれよ」
　ぶつぶつ告げるデュオも平常時と同じで、やはり緊迫した様子は見受けられない。
「わかってます」
「それより、ヒイロさん無事なんですか？」
　口々に問いかける彼らは、プリベンターと組んでの仕事も多い。というより、デュオとセットでプリベンターの作戦に協力する機会が多いメンバーだった。その為、ヒイロと現場で顔を合わせた者ばかりなのだ。
　心配そうな口調に、デュオは軽く肩を竦めて見せた。
「無事じゃないから、ここで薬探してんだよ」
　言われればその通りの現状に、誰もが失言を察して口を噤んだ。大げさなジェスチャーを見せる上司が、思ったより機嫌が悪いのだと気づいてしまう。ちらりと互いに目配せをかわし、目の前に広げられた地図に意識を向ける。
　東側からトロワが、中央から五飛が敵を引き付けている。その間に裏側から侵入して目的の薬を見つける予定だった。
「よし、そんじゃ・・・片っ端から」
「――本気ですか？！」
　とんでもないデュオの言葉に、目を剥いて問いかけたのはデビッドだった。地図の上に記された部屋数の多さに、ぎょっとする。これだけの部屋を確認していたら、いったいどのくらい時間がかかるのか。
　彼の不安を見越したように、デュオはにっと唇を横に引いて笑った。
「んなわけねぇだろ。毎回引っかかるなよなぁ・・」
　最近はシフェルが引っかからなくなったので、若手をおちょくって遊んでいるデュオだ。知っていても引っかかるのは、デビッドくらいだろう。
「ここと、ここ。それから・・・ここか。これだけ爆破すりゃ、飛び出した連中はこの通路へ逃げ込む。一網打尽だ」
　３ヵ所を選び出し、次々と指で示していく。頷いて手元の爆薬を確認したエージェントが、最後に指が止まった通路に視線を向けた。確かに・・・構造上、この通路以外に逃げ道はないと考えるのが普通だろう。しかし、僅か数分地図を見ていただけで、ここまで見抜けるのは彼くらいだ。
「じゃ、爆破はおまえらで分担してくれ。オレは通路で待ち伏せを担当するから」
　あっさりと指示して立ち上がる彼を、危ないからと呼び止めるバカはいない。誰より優れた実力の持ち主を見送り、顔を見合わせた３人は作戦時間を打ち合わせて走り出した。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....

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　ああ、ヒイロがいないまま過ぎていく。早く話をヒイロの病室に戻したいです。目覚めたヒイロが最初にみるのは恋人の・・・・！　ってカンジ♪　←煽るだけ煽っている・・・つもり（汗