W2×1　【MiyabihimeA】

「あら、アッサムかしら・・・」
　躊躇う仕草もない彼女は、ある意味”兵（つわもの）”である。キツいヒイロの視線を無視しながら、笑顔で焼きたてスコーンを味わっていた。
「ヒイロ、機嫌直せよ」
　困ったと顔に書いたデュオの声色に、ヒイロの怒りは恋人へ向かう。
「お前が連れてきた客だ。俺は知らない」
　我が侭に言い切った恋人が立ち上がり、部屋を出て行くのをデュオは溜め息で見送った。
「悪ぃな・・」
「いえ、私が原因でしょう？」
　申し訳ないわと謝罪されてしまえば、デュオも苦笑するしかない。すぐに機嫌を直す方法は知っているが、だからといって女性をいきなり森の奥に放置もできなかった。
　構えば構うほど、ヒイロの機嫌が悪くなるんだけど・・・・しょうがない。
「ところで、リリーナさんは・・」
「リリーナで結構ですわ」
「あっそ、じゃあリリーナは何故こんな森の中にいたの？」
「・・・実は、ドロシーとはぐれてしまいまして・・」
　聞き慣れない名前に、宙を睨む。結局首を傾げたデュオは、素直に目の前の栗毛美女に聞くことにした。
「ドロシーって？」
「彼女ですわ」
　指差された先で空中に浮いている金髪女性に、デュオは顔を引き攣らせる。ヒイロと一緒に暮らして早十数年、いまさら超常現象に驚くほどウブじゃないが・・・・突然現れた侵入者に溜め息をついて手を差し伸べた。
「とりあえず・・・地上に降りてお茶にしません？」
　当然とばかり手を取ってエスコートされたドロシーは、すぐにリリーナの足元に駆け寄って膝をついた。気の強そうな美女だと思っていたので、跪く姿はデュオにとって意外で・・・。
「ああ、リリーナ様。ご無事でよかった。どれほど心配したか・・」
「ごめんなさい。ドロシー」
　会話にさらに驚いた。ヒイロの結界を無視して乱入したドロシーが何の種族なのか知らないが、人間じゃないのは確実だ。その彼女が膝を折って”様”付けするってことは―――リリーナも人間じゃない？！
「あの～」
　恐る恐る声をかける。
「お2人は、どちらの関係で？？」
　怪訝そうに特徴ある眉を顰めたドロシーは、リリーナを見上げる。
「説明を？」
「しておりません」
　リリーナの断言にこくりと頷き、デュオはドロシーが口を開くのを待った。
「私は人間の言う”魔女”ですわね。正確には”魔術”を使う長寿の種族なんですけど・・・リリーナ様は”女神”が一番近いのかしら」
　とんでもない単語が飛び出し、デュオは混乱した頭を整理しようと試みていた。
「えっと、リリーナって神様ってコト？？」
「少し違うのですけれど、他の種族の願いを叶えることはできます。ただ、私自身は自分を守ることも出来ませんので、ずっとドロシーが一緒にいてくれたのです」
　へぇ～と感心しきりのデュオに、リリーナが微笑んで手を差し伸べる。反射的に受け取った瞬間、バタンと音高くドアが開いた。
「デュオ、その手を取るなッ！」
　叫んで飛び込んだヒイロの必死の形相の直後、視界が歪んで倒れこんでいた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....

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　ヒイロ・・・出歯亀状態じゃないですか・・・。
　ううっ、いや。いいけどね。デュオが一番格好悪い。なんかリリーナが悪巧みしているみたいに見えますが、実は一番悪いのは・・・・・？