W2×1　【MiyabihimeA】

　いつでも同じ―――デュオは自分の許容量を超える責任を背負って、己の心を押し潰してしまう。彼の強さであり、同時に弱さとも表現できる部分だ。
　ヒイロの左手の薬指に光る指輪を引き寄せて、唇で存在を確かめた。冷たい金属の感触に、デュオの気分は高揚する。束縛の証など、ヒイロには重荷だろうに・・・・こうして身に着けていてくれる。この事実が素直に嬉しかった。
「・・・・・サンキューな」
　居心地の良い沈黙を破ったデュオの照れた表情に、嬉しくなる。自分の存在が誰かの役に立つ。誰よりも大切な人の為なら、さらに価値があった。
　デュオのトレードマークになっている三つ編みを握り、右手を差し出す。くすっと笑ったデュオが左手を乗せた。
　互いの利き腕を預けあう行為は、エージェントとしての失墜を意味するのに―――まるで共犯者を認め合う様に似ている。
「今回は散々な任務だったぜ」
　ぼやいたデュオに、さっきまでの暗い色はなかった。何かを吹っ切った様子を虚勢でないと判断したヒイロは、蒼い瞳を数回瞬く。
　外で聞こえた車のブレーキ音に、溜め息をついたデュオが立ち上がった。
「じゃ、行きますか」
　サイレンは鳴らしていないが、救急車の到着を見て取った2人は、五飛に手を振ると歩き出す。デュオの手が、ヒイロの肩に回された。まるで支えてもらうことを望むような彼の行為は、普段なら考えられない。ヒイロより低い筈の体温は・・熱かった。


　一週間後、退院したデュオの隣で、ヒイロは彼の寝顔を見ていた。笑みを刻んでいることが多い口元と、印象的なキツい青紫の瞳がないだけで、デュオの表情はいつもより幼く感じる。
　三つ編みを解いて、後ろでひとつに纏めただけの髪が広がり、ベッドの上をブラウンに染めていた。その毛先をひと摘まみ、指先できゅっと握り締める。
　規則的な呼吸を繰り返すデュオが生きている事実を確認し、当たり前の現実に感謝した。
　左手の薬指で光る指輪―――同じものがデュオの指でも光っている。入院中のデュオにプレゼントしたのは、ヒイロだった。自分へ贈られたものと同じ指輪を探し、眠っていたデュオの指に嵌めたのだ。目覚めたデュオの驚きの表情と、嬉しそうな声は忘れられないだろう。
　束縛されることは嫌いだった。
　だが、束縛されたいと願う相手がいるのは―――幸せなのだ。そして、その相手を束縛したいと望むことも・・・・同じく。
「ん・・・ヒイロ？」
　至高のエージェントランクを冠しながら、俺の隣で熟睡してくれる男は、完全に俺の存在を許してくれている。無意識の行為で信頼を示すデュオの隣で、ヒイロは柔らかい笑みを浮かべた。
「眠れない・・の？」
「いや」
　否定して、抱き寄せてくれるデュオの胸で目を閉じる。鼓動が直接触れ合った肌から聞こえて、自然と誘われる眠りの腕（かいな）に意識を預けた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 NEXT？....

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　一応、任務完了です。
　少し消化不良があるから、いつか番外編を書きたいな。・・・すぐは無理だけど・・・汗。

　さて、依頼者の沙都さま―――いかがでしょう？　一応シフェルも活躍しちゃったし、デュオとヒイロのLOVEも♪　指輪のあたりとか（笑）返品不可ですので、ご注意くださいね！　←注意のしようがないよ(^^;