W2×1　【MiyabihimeA】

　サングラスで目元を隠しているが、その整った容貌は人目を引いた。だが、何より彼を目立たせているのは、長い三つ編みの存在だ。背で揺れるブラウンの髪は長く、腰まで届く長さだった。男性でそこまで長く伸ばしているのは珍しく、しかし似合っているので違和感はない。
　大きな樹を囲むベンチには見向きもせず、木陰の街頭に背を預けて立つハンサムに、うっとりする女性も数多く見受けられた。
「あの、待ち合わせですか？」
　さらりとしたブルネットの女性の声に、デュオは視線を斜め下へ向ける。頭ひとつ低い位置で見上げる女性に、得意の笑顔を向けた。人懐こい印象の表情で、誰にでも当たりの良い笑み。
　だが彼のことを知っている親しい人間が見れば、デュオの笑顔が作り物だと気づく筈だ。とっさに表情を作って壁を作り出すデュオの癖は、戦争が終わっても簡単に直らないらしい。
「そうだけど？」
「よろしければ、一緒にお話していてもいいかしら」
　不思議そうな顔をしたデュオに、女性は幼い少女のように頬を染めた。
「私も待ち合わせなんです。ご迷惑でなければ、待ち合わせの人が来るまで、お話できないかと思って・・」
　慌てた様子でつむがれた言葉に、デュオは苦笑して頷いた。照れている女性の勇気ある行動に促されたのか、遠巻きに見ていた他の女性も近づいてくる。
　気づけば周囲は小さいながらも人垣が出来ていて、デュオは困惑しながら女性達のお喋りに付き合っていた。
「恋人と待ち合わせですか？」
「どちらからいらしたの？」
「格好いい人ねって、噂してましたのよ」
　褒めるか、質問か。偏った会話内容に適当に頷きながら、デュオは内心でウンザリしていた。
　こうしてみると、ドロシーやリリーナとのお茶会は楽しかった。少なくとも上流階級で育った彼女らは、他人への必要以上の詮索はしない。何より、居心地が良かったのだ。
　この遠慮ない女性達をどう追い払ったものかと悩んでいるデュオも、表面上はフェミニストなカトルよろしく適当に相手をしていた。
　ところが・・・。
「待たせたな、デュオ」
　不機嫌そうな声がかかり、気配を感じ取っていたデュオが満面の笑みで振り返る。女性達に向けたことのない、本心からの表情で美人を見つめた。
「ぜんぜん待ってないぜ。時間通りだ」
　目の前の女性の間を器用に擦り抜けて、待ち侘びた恋人の腰に手を回す。普段なら恥ずかしがって振りほどくヒイロが、今日は当然のようにその行為を受け入れた。さらに自分から手を伸ばし、デュオの三つ編みの先を握る。
「じゃ、待ち人来たから」
　やっと厄介払いできると嬉しそうに歩き出すデュオを、たくさんのため息が追いかけた。
　少し離れた場所で、ヒイロは隣の男を見上げる。195年以降、めきめきと成長したデュオは長身で、すらっとしたハンサムだ。反面、まるで成長を忘れたみたいに華奢な自分の体・・・・。
「・・・楽しかったみたいだな」
　刺々しい口調になっているは理解しているが、取り繕う気はヒイロになかった。むっとした表情で見上げてくる黒髪の恋人に、小首を傾げて笑う。
「何？　ヤキモチ焼いちゃった？」
　にこにこしている頬をぎゅっと抓り、痛がるデュオの三つ編みを引いて目を閉じた。要求されている事に気づいたデュオは、当然の権利とばかり、ヒイロの紅い唇を奪う。腰に回した手をさらに引き寄せ、抱き締める細い体を全身で受け止めた。
「大丈夫、オレはヒイロしか見てないから」
「・・・・・嘘だ」
　拗ねて唇を尖らせたヒイロの、可愛い甘えを含んだ否定に、一瞬天を仰いでしまう。このまま押し倒してしまいたいくらい、可愛い。もちろん公衆の面前だし、公道なので我慢するしかないのだが・・・。
「嘘は吐かないのがオレの信条だぜ。それに、ヒイロ相手に嘘なんて吐けないさ。いつだって本気で、一杯一杯なんだから」
　耳元で囁いて甘いキスを髪や額に降らせると、ようやくヒイロは淡く微笑んだ。
「ならば、証明して見せろ」
　挑発的なヒイロの発言をキスで塞いで、「了解」と様になったウィンクを贈った。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　END or....？

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　美弥子様、大変お待たせいたしました。
　いかがでしょう？　綾雅的には、かなり甘く仕上げています。
　常連さんで、1996年頃から雅姫同盟の本をお買い上げいただいている美弥子様なので、かなり緊張して書いてしまいました♪　楽しんでいただけましたでしょうか？
　またキリ番をGETして、リクしてくださいね！！
　このたびは、12121のキリリクありがとうございましたm(_ _)m