W2×1　【MiyabihimeA】

　相変わらず時間の流れから取り残された城の敷地で、ぼんやりと庭の花を眺めていたのだが・・気づけばうとうとと船を漕いでいる。この城に移ってから5年、ハンターによる襲撃も0ではないが少なくなったので、ヒイロを1人にして庭にいた。
　何やら探し物をしているらしく、ヒイロは半日ほど地下に籠もっている。独特の湿った空気が肌に合わないデュオは、さっさと明るい庭へ退散した。
　ピクン、指先が揺れる。うっすらと目を開いたデュオは、眇めた眼差しで周囲の様子を窺った。
　気の所為じゃなく、何かを感じる。
　久しぶりのお客さんかな？　笑みを浮かべながら、片時も手放さないナイフの存在を右手で確認した。ゆっくりと身を起こす。
　ひとつ溜め息をついた。
「・・・・無粋だなぁ」
　目覚めたばかりとは思えない素早さで身を翻し、城の中へ向かう。ヒイロ以外の気配はすべて、排除すべき侵入者でしかなかった。
　視線を素早くめぐらせれば、テラスへ続くガラス扉が開いている。どうやら、すでに城の奥へ進んだらしい。無造作に踏み込んだデュオは、にやっと笑んで振り返った。
「お客さん、パーティーに招待した記憶はないけど？」
　茶化した口調でナイフを抜き、ガラス扉の影になるカーテンの方へ突きつけた。デュオでさえ見落としそうになるほど、完全に殺された気配が揺らぐ。カーテンの不自然な揺れがなければ、きっと見落としてしまっただろう。
　かなりの実力者―――久しぶりの手ごたえありそうな敵に、デュオは楽しそうに笑った。
　ばさっとカーテンを振り払い、2人が姿を見せる。片方はデュオより少し年上の青年、長い前髪が顔の半分を隠していた。緑の瞳が柔らかい印象の美丈夫だ。対して隣に立つ少年は、ヒイロと大差ない子供に見える。異国の青い衣装に身を包んだ少年は、肩にかかる長さの髪を後ろでひとつに束ねていた。
「・・奴はどこだ？」
　不思議な気配を放つ少年が、威圧的に言い放つ。不機嫌そうに顰められた眉と、好戦的な黒い瞳が印象的だが、かなり整った顔立ちをしていた。
「奴って？」
　知っていながら躱す。左手の指先で三つ編みを弄りながら、右手のナイフを宙に放って受け止める動作を繰り返した。
「俺が聞いている。答えろ！」
「嫌だね、オレに勝ったら教えてやるよ」
　死神と呼ばれた頃の物騒な表情を浮かべて見やるデュオに対し、少年は目を細めると笑みを浮かべた。上着を脱いで隣の青年に手渡す。
「ならば、望みどおり叩きのめしてやろう」
「へぇ、やれるんならやってみろ」
　デュオに気圧されることなく、少年は三日月型の刃を持つ刀を取り出す。それが青龍刀と呼ばれるものだと知らないデュオは、すっと目を眇めて間合いを計った。
　一瞬で跳躍した少年が切りかかるのを、ナイフで弾く。かなり硬い金属で鍛えたナイフが、キンと乾いた音を立てた。腕に痺れがくる程の振り下ろしに、口元の笑みが深まる。
　本当に楽しめそうだ。
　手ごたえのない相手にウンザリしていたデュオの表情が一変し、弾いたナイフを突き出す。ふわっと軽い所作で避けられ、続いて蹴りを放った。しゃがみこんで躱した少年の青龍刀が下から繰り出され、咄嗟に身を捩る。ギリギリの位置を抜けた刃が、三つ編みを掠めた。
「・・っぶね！」
　思わず呟いたデュオの背に、解けた髪が散らばる。赤みがかったブラウンは波打って広がり、鬱陶しそうにデュオが掻き上げた。
「避けきるとは・・大したものだ」
　感心しているのか、バカにしているのか。紙一重の賞賛に、デュオはぺろりと唇を舐める。
「そっちもな・・・ッ！」
　叫んだ声が余韻を引くまま、予備動作なく跳躍したデュオがナイフを左手に持ち替えて薙いだ。ふわっと髪が視界を遮り、次の瞬間かすかな血の臭いが広まる。
「・・・っ・・」
　息を呑んだ声と血の臭いに、仕掛けたデュオの口元が歪められた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....

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　名前は出てないけど、バレバレの2人♪
　さて、デュオとヒイロにとって2人は敵なのか、味方なのか！
　ああ、吸血鬼ネタ書きやすい♪　っていうか、楽しいわ♬