W2×1　【MiyabihimeA】

＜武装グループからの声明が入りました。ご覧ください＞
　続いて画面がブラックアウトした。
　―――――！
　全員が息を呑む。
≪ここに、我々『新ホワイト・ファング』の声明を発表する≫
「え？　彼が何でこんなところに・・・」
「奴め！　はやり、生きていたのかッ！！」
「・・・驚いたな」
「げっ！　マジかよぉ～」
「ゼクス・マーキスッ！！」
　画面に映った男―――その名を『ミリアルド・ピースクラフト』、またの名を『ゼクス・マーキス』。
　印象的な青い瞳と、プラチナ・ブロンドの整った顔立ちをマスクの下に隠して、戦いの中に散っていった。
　戦士としての自分を信じて、妹（リリーナ・ピースクラフト）の為にホワイト・ファングに身を投じさえした、誇り高き孤高の男―――。

≪我々は、Cエリアのコロニー36個を掌握している。これは暴挙ではなく、全宇宙の統一を果たし、完全なる平和を齎す第一歩である。3年前と同じ、完全なる平和が訪れる兆しさえないこの宇宙に、我々は鉄槌を下すものであり・・・≫

　その後、長々と続く演説に五飛の怒りが爆発した。
「貴様に正義を語る資格などない！」
「まいったね、どうする？」
　デュオの言葉に、ヒイロが振り返る。視線が絡み合うより先に、ヒイロは口を開いた。
「どちらにしろ、作戦は絞られてくるな」
　ヒイロの独り言に近いセリフに、皆の視線が集中した。その中で、徐にヒイロはナタクのキーボードに手を触れる。五飛に視線だけで了承を得ると、すぐさま切り替えた画面で説明を始めた。
「いいか、奴らのいるCエリアの周囲の地形は独特だ。元々L1コロニー群とL2コロニー群の間が、他のコロニー群と比べて広いのは、この小惑星群のせいだった。つまり、この惑星群に紛れて近づくことが可能だということだ」
　ヒイロの図解に、カトルが手を加える。
　コロニー群の一部を拡大して、そのひとつに矢印を記した。
「この第23コロニーは建造されたばかりで、人口管理がまだ徹底されていません。いまなら工作員として誰かを送り込むことが可能です」
　それに、デュオがパチンと指を鳴らした。
「じゃ、オレが潜入するぜ！」
「いや、ダメだ」
　ヒイロの反論に、デュオが怪訝そうな表情になる。
　まさか、また俺が・・・とか言い出すんじゃないだろうなぁ。ヒイロの奴・・。
　デュオの心境を読んだのか、ヒイロは「大丈夫だ」と目で伝えてくる。
「ガンダムは有効に利用したい。それに、お前のデスサイズ・ヘルは隠密戦法を得意とする。だから、敵に察知されずに近づける戦力を無駄に配置することはできない」
「なるほど・・・」
　ヒイロの言うことに筋が通っているので、デュオはひとまず肩を竦めて引き下がった。
「ならば・・・おれが潜入しよう」
　トロワの挙手に、今度は誰も反対しなかった。
　適性でも、消去法でも彼が一番適任に思われた。3年前もそうだが、トロワが一番役になりきれる。それにバレにくいという点では、すでに潜入に失敗したヒイロや完全に面の割れているカトルより、ずっといいだろう。隠密行動で役割の決まったデュオや、絶対にバレるだろう（笑）五飛は使えない。結局、残るのはと露和だけだった。
「えっと、潜入がトロワ・・・デュオと五飛がガンダムで出るんですよね。ヒイロは？」
　カトルの指摘に、ヒイロは軽く目を伏せた。デュオの胸に嫌な予感が走る。
「・・俺はやることがある」
「おい、まさか？！」
　デュオの勢いに、ヒイロは首を振った。
「違う」
　即座に否定されたことで、デュオは逆に不信感を募らせた。気づかないはずがないのに、ヒイロは見ないフリをする。
「コンピュータでの敵の撹乱。それに情報提供等のバックアップだ。司令塔は必要だろう」
「確かに・・」
　トロワの同意で、カトルや五飛も納得する。しかし、デュオだけは不信の眼差しを逸らせない。
　絶対にヒイロは何かするつもりだ、オレに隠して！
「カトルは、まだ家の方が片付かないんだろう？」
　ヒイロに話を振られて、大きく溜め息をついたカトルが天井を仰いだ。
「ええ、そうなんですが・・。この際、そんなこと言っていられませんから」
「無理するな」
「軟弱だから、そういうことになるんだ！」
　トロワと五飛に、カトルは力なく微笑んだ。
「ほかに必要なポジションがない以上、カトルには物資の補給など後方支援を頼む。いざという時に動かせるガンダムの予備は必要だ」
　サンドロックとそのパイロットは予備戦力とする。ヒイロに言われて「戦える」と反論しようとしたカトルの意志を、ヒイロの悲しげに蒼い瞳が封じ込める。
「そんじゃ、作戦内容をパッパと決めちまおう」
　デュオの最もな提案に、ヒイロから4人に作戦の手順が伝えられた。1人ずつ説明を受けて、作戦全体のイメージを纏め上げる。
　僅か25分で纏めた作戦は、5人の中でもっともエージェントとして能力の高いヒイロが、元々用意していたものの1つらしかった。

「作戦は理解しているな」
　ヒイロの凛とした声に、4人は重々しく頷いた。
　決意を滲ませる3人。
　悲しげな色を浮かべるヒイロ。
　それを見て、密かに決心するデュオ。
　だが、すべてはもう動き出すしかない。

　ヒイロの声が響く。
「明朝0時をもって、作戦を決行する！！」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....