W2×1　【MiyabihimeA】

　突然の僥倖に恵まれた昨日を思い浮かべる。
　朝、姉の喜多に「婿に行け」と言われ・・あっという間に準備が整えられていった。恋焦がれる主君に手が届かなくても、命懸けで断ろうとした小十郎が聞かされたのは「伊達家」という単語。信じられなくて・・目の前に、白無垢姿の可憐な政宗様を見ても・・・まだ現実だと思えなかった。
　ずっと俯いていらしたのは、嫌だからなのだと誤解して・・２人になったら謝ろうと考えた。きっと好いたお人があるのだろうと想像した小十郎へ、両手をついて頭を下げられて驚く。「惚れ直した」「愛してる」など・・・家臣である身に過ぎたお言葉をいただき、愛おしさに・・我を失った。
　朝の騒々しさから切り離された奥座敷で、最愛の人と迎える朝は眩しくて・・・少しだけ目を細めて白い肌に手を滑らせる。頬に触れたことで覚醒を促されたのか、政宗は薄く隻眼を開いた。
「・・ん・・・こじゅ」
「おはようございます、政宗様」
　起こしてしまいましたな・・・自然と浮かぶ笑みをじっと見上げる主君の白皙の頬が桜色に染まる。
「m・・morning、小十郎」
　恥ずかしそうに俯いた政宗が身を起こそうとして息を呑んだ。
「っ・・！」
「ああ・・まだ動かれますな。本日は寝ておられた方が・・」
「Why?、痛っ・・」
　倒れ込んだ政宗を抱き留めて、黒髪の上に接吻けを落とす。ぎゅっと胸元の袷を握る手が少し震えて、上目遣いに見上げる政宗の眦にも唇を触れた。
「でも・・・」
「本日は誰も起こしに参りませんよ」
　初夜の翌朝、花嫁と花婿の部屋へ起こしに来る無粋者など、伊達の家中を探してもいないだろう。ましてや、花嫁が当主の政宗なのだ。小十郎の言葉を証明するように、人払いがされた周囲は静まり返っていた。
「・・・・そう、だよな」
　状況を理解した政宗が微笑んで、小十郎の胸元へ顔を埋めた。頬擦りする仕草が愛らしくて、されるがままに許してやる。右手で抱きとめた主の髪を左手で梳いて・・穏やかな時を楽しむ。
　――――ドカンッ！！
　派手な爆発音が響いて、嫌な予感に小十郎の顔が引き攣った。
　まさか？
「Ah～、今の・・・」
「気の所為でございましょう、小十郎めには何も聞こえませんでしたぞ」
　誰も何かが聞こえたとは言っていない・・突っ込みそうになりながら、政宗は小十郎の意を汲んで頬を押し付けたが・・・・凄い勢いで走ってくる足音がする。
「小十郎・・」
「ご安心召され。この小十郎、命に代えてもあなた様をお守りいたします」
　幾度言われても耳に心地よい誓いが、今日は違って聞こえる。
　やっぱり結婚すると違うんだよな・・いろいろと・・・。思わず頬を染めて、初恋の人を見上げる政宗は抱き寄せる腕に素直に身を任せた。昨夜脱ぎ散らかした筈の白無垢は丁寧に畳まれており、用意されていた新しい単を肩に掛けられる。
　寄り添って体の力を抜いた政宗が口を開いたと同時に、凄い勢いで襖が開いた。パァンと甲高い音を立てて開くような無作法をする侍女も側近も居ない。強いて例えるなら、政宗が小十郎相手に行うくらいだろうか。
「政宗殿っ！　こちらか？！　ぜひお手合わせ・・・・・？　は・・破廉恥にござるぅ！！」
　びくっと肩を震わせた主君を腕に抱いたまま、小十郎は深い溜め息を吐いた。聞き覚えのある爆発音、そして慌ただしい足音―――予想がついていた相手とは言え、さすがに武田信玄に苦情の書状を書いた方がいいかも知れないと真剣に悩む。
「勝手に入ってきて騒ぐんじゃねぇ、真田」
　政宗に対する丁寧さや穏やかさをかなぐり捨てた小十郎の低い声に、真っ赤な顔の真田幸村が慌てて襖を閉める。ずるずると座り込む音がして、ぶつぶつ何か言っているのが分かった。
「Shit!　折角のHigh spirits（上機嫌）なSituation（状況）が台無しだぜ」
　舌打ちした政宗に苦笑し、頬と唇に触れるだけの接吻けを贈る。
「It was still the morning when I was happy（それでも、私にとって幸せな朝でしたぞ）」
「・・・・・・・me too」
　外に居る幸村に聞かせないよう、耳元で囁かれた南蛮語の睦言に政宗はふわりと微笑んだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....

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　うちの小十郎は、政宗様のお話になることを理解できぬなど・・側近として恥じるべき！と考えていますｗｗｗ　その為、主と一緒に学んで・・・こっそり２人で話すときは南蛮語♪　でも書いてる綾雅が翻訳ソフト片手なのでｗｗｗ　怪しい英語ｗｗｗ　
　ちなみに、この後別の連中も乱入しそうかな？