W2×1　【MiyabihimeA】

「怒り狂う狼、傲慢な孔雀、熊は怠け・・強欲な狐と蠅（ハエ）、淫らな蠍（サソリ）―――答えは？」
　謎掛けに似たデュオの言葉の裏を一瞬で悟った。
　挙げられた動物は６つ、彼が７つの大罪について語ったのは僅か１日前で・・・残るはひとつだけ。
「嫉妬する蛇・・・・」
　ぱんぱんと肩の高さで手を打ち鳴らしたデュオが笑う。禍々しい表情で満足そうに息をついた。
「辿り着いたじゃないか・・・それが答えだ」
　駆け寄る複数の足音がデュオの声を遮る。
「またやらかしたのかっ！　貴様は・・っ」
　怒りに震える所長へ、舞台俳優のようにデュオは大きく一礼した。右足を軽く引いて手を胸部に当てた礼は、中世の騎士が王に謁見する際の仕草に似ている。
「これはこれは・・所長自ら足を運んでくださるとは・・。なにぶんにも仮住まいの身、お構いできぬ失礼をお許しいただきたい」
　慇懃無礼を絵に描いたような、人を食った態度で応じたデュオは満面の笑みを作って顔を上げた。
　数名の看守とデュオの間には、鉄格子と死体があるのみ。
「俺の部下を何人殺せば気が済むっ！」
「・・・・・全員殺しても足りないが・・・まぁ、暇つぶしだ」
　所長の怒鳴り声は興味の対象外だったのか、ひどく冷淡で残酷な言葉を吐き出してデュオは笑顔を消した。途端に整った顔はぞくりと寒気のする迫力を帯びる。
「・・・っ」
　息を呑んだ彼らと対照的に、ヒイロは冷静だった。本気のデュオを見たことがある・・そのときに比べれば、今のデュオは自制している方だろう。
　さっきの看守を殺した時同様、殺そうと思えば彼らをいつでも殺せる自信が滲み出ている。
「・・ふん、唯一の楽しみを邪魔した罰を受けてもらおうか・・まずは・・・」
「デュオっ！」
　遮ったヒイロの声に、途端に笑顔を浮かべたデュオが振り返る。三つ編みが揺れて背に落ち着いた。
「優しいな、ヒイロ。彼らを助けるつもりか？」
「・・答え合わせの途中だ・・・」
　自分の都合を優先したようなヒイロの言葉に、看守達は目を見張る。しかしデュオはくすくすと笑い出した。
「悪者になって、彼らを助ける。オレの気を逸らそうと必死なおまえに免じて・・・これ以上無粋な真似をしなければ、羊に手を出さない」
　デュオの確約など何の保証もない。彼がその気になれば、先ほどの看守のようにこの男達も死体になるだろう。だが・・自ら言い出した言葉をデュオは守ろうとしてきた。少なくとも、ヒイロに対しては―――今の寄るべはそれのみだ。
　この複雑で厄介な男の扱い方を記した書物があったなら、ヒイロはすぐに飛びついただろう。
「・・・指輪のデザインの共通点は爪だった。そしてお前は７つの大罪を持ち出して俺に説明した・・・つまり、傲慢さが犯行理由だということか？」
　デュオの興味が移らないように必死だった。ひきつけようとするヒイロの努力を見透かしながら、デュオは穏やかな顔で首を縦に振る。
「そうだ、傲慢が理由だ。だが・・それは犯人の側ではなく」
「被害者の傲慢・・・妻や恋人、婚約者がいながら・・・浮気した」
「誘った蛇は罪深い、だが誘われたイヴは・・・罰を受けた。誰よりも重く、無実のアダムすら道連れにして」
　看守達が死体を片付ける横で、ヒイロは一瞬状況を忘れた。
　彼らを守ろうとした意識も、事件を解決しようという気持ちすら、完全に白紙になる。そして脳裏に過ぎるのは―――事件の状況を間近でみるような、不思議な感覚だった。
　何もかもが・・・詳（つまび）らかにされていく・・・・・。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....

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　はい、デュオの取扱説明書が欲しいヒイロさんでしたｗｗｗ　次回で本当に解決できるんだろうか・・・難しいけど、ガンバル。ちょっと長くなりそうな予感です。

【拍手コメント御礼】　ユナ様・・・貧乏くじから・・ですか。拍手SSだな・・・http://miyabihime.comから入ると、順番どおりリンクしてるので確認してみてくださいｗｗ
　もるもっち様・・・拍手凄いですよね。なんでしょうね、ここ数日、裏passの申請も凄いんですよ！　聖書は複数の人間の手が入った書物なので、書く人によって話の構成やら違ってて・・・結構短編集みたいな感じの仕上がりです。デュオはそういう部分を見つけては引っ掻き回した発言をする、嫌な奴ですｗｗｗ