W2×1　【MiyabihimeA】

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「・・出掛けてくるから」
　言い置いて部屋を出るヒイロを、デュオは笑顔で送り出す。ヒイロが振り返ると、ひらひら手を振ってお見送りした。
　ところが、１ブロック先を曲がった後姿が見えなくなった瞬間、デュオは慌しくコートを掴んで走り出す。一流エージェントの名に恥じぬスピードで回り込み、ヒイロの尾行を始めた。
　２月１３日、突然朝になって出掛けると言い出したヒイロ。明日はバレンタインで、今夜は一緒に食事に行く約束をしている。そのギリギリの時間まで“仕事”で出掛けるらしい。だが・・・デュオが危険を冒してプリベンターへハックした結果、ヒイロに任務は割り当てられておらず、ヒイロ自ら休暇申請をしていた。
　つまり・・仕事の筈がないのだ。
　追跡し始めて１０分後、車道をみて何かを探すヒイロ前に、車が滑り込む。躊躇いなく助手席に乗り込んだ恋人の姿に、デュオの頬が引き攣った。
　拾ったタクシーの運転手に一言。
「あの黒い車を追ってくれ」
　どう聞いても、ストーカーか刑事のようなセリフだが、その眼差しは鋭く、嫉妬に顔を歪めたデュオが正義の味方とは思えない。間違いなく犯罪者だ。
　青ざめた運転手は、見失ったら殺されると怯えながら必死で前の車を追った。
　・・・・ここか。
　可哀想なタクシーにはチップを弾んでやった。半分は口止め料だ。当然本人にも言い聞かせている。
　見上げる先にある高層マンションは、そこそこ金持ち連中が集まる最新のビルだ。
「とりあえず・・踏み込む！」
　ヒイロは騙されているんだ。きっと何かを頼まれ、素直なヒイロは信じて家に行っただけ。
　襲われかけて、今頃オレの名を呼んでいるかも知れない。泣いていたら・・・・！？　
　自分の想像で青ざめたデュオが勢いよく飛び込んだマンション―――部屋番号はすぐ分かる。
　今朝、ヒイロのコートに発信機を仕込んだのだ。詳細な地図を表示し、ゆっくり追跡を開始した。
　辿り着いた部屋のチャイムに手を掛けようとして、中で聞こえた悲鳴に顔色を変える。ベルトから取り出した銃で撃ち、体当たりで飛び込む。
「動くなっ！・・・・え？」
　格好良く助けに来たつもりのデュオに飛んできたのは、恋人の怒声と甘い香りだった。
「玄関を壊すな」
「そうじゃないわ、ヒイロ・・まずはチャイムを鳴らすように躾けなくちゃダメよ」
　・・・金髪の美女クリスの声は怒りに震えている。その引き攣った笑顔は正直、怖い。
「えっと・・・？」
「バレンタインのチョコを作ろうと思って」
　疑われて拗ねるヒイロと、家を破壊されたクリスに土下座で謝罪するデュオは、後日クリスの恋人であるシフェルからも盛大に叱られたのは言うまでもない（笑

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Happy END　

　

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　すっかりUPし忘れていました；　無料配布コピーだったんですが、ペラい１枚チラシっぽい感じですね。