W2×1　【MiyabihimeA】

「ヒイロ？」
「メイド風情が主人の頬を張るなどあってはなりません」
「随分、他人行儀な言い方するんだな」
　使用人としての立場で謝罪するヒイロへ、デュオはゆっくり足を踏み出した。ドアの前から動かないヒイロは顔を上げない。もしデュオの顔を見たなら、声を上げて理由を尋ねただろう。いや、驚きに目を瞠るかも知れない。
「・・・・・もう何も言うな。頼むから・・離れないでくれ」
　他人行儀な態度は、まるでデュオを見限り突き放したように思えた。ヒイロにそんなつもりはないだろう。しかしデュオは突き刺さる胸の痛みに震えた。
　頬を伝う涙に気づきもせず、手を伸ばして微笑む。コントロールし続けてきた感情が溢れて、デュオが作り上げた壁を壊し始めていた。
「ですが・・・っ！」
　ようやく顔を上げたヒイロは言葉を失う。
　常に自信過剰な笑みで余裕を撒き散らす主人が泣いていた。儚い笑みを浮べて、差し出す手が震えている。そっと触れると引き寄せられた。腕の中に拘束されながら見上げる主人は、自分が泣いている自覚がないのか隠そうとしない。
　指先で涙を拭うヒイロの仕草で、ようやく気づいたデュオは不思議そうに己の涙を指に乗せた。
「涙・・・・？」
「何故泣く？」
　突き放した印象を与える敬語をやめたヒイロの問いに、首を横に振る。自分でも理由が分からなかった。ただ零れる涙は生理現象に近く、止める方法も知らない。
　涙同様、溢れた感情が紡ぐ言葉もまた・・止まらなかった。
「オレ、ヒイロが好きだ・・・」
　だから嫌われたくない。
　最初はこの瞳の色に魅せられた。蒼い瞳―――優しかった母親と同じ、宝石のような輝きに惹かれて隣に置こうと決めたのだ。信じる気などなかったから、彼の気持ちはどうでも良かった。
　寝首を掻こうとするなら、返り討ちにすればいい。その程度の感覚で選んだメイドだった。
　なのに・・・・・いつの間に心へ入り込まれたのか。
「・・おまえに隣にいて欲しい」
　紡いだ言葉にヒイロの目が大きく見開かれ、吸い込まれるように瞼へデュオの唇が落とされる。思わず目を伏せ、瞼に受けたキスは熱かった。
「・・・・・俺はメイドだ」
　使用人なのだと立場を説くヒイロの頑なさが、デュオの心を抉る。痛みすら感じる言葉を拒絶だと思った。
「だったら、オレを好きになれ」
　命じれば逆らえない。
　本心から愛されなくてもいい。そんなのは昔からで、悪魔憑きの瞳と罵られ、気味が悪いと遠ざけられるのは慣れた。使用人として距離を置こうとするなら、命令で抵抗を奪えばいいんだ。
　手に入るものを諦めるほど、デュオは大人になれない。そして相手の気持ちを推し量れるほど・・・まだ人の心の機微を知らなかった。死の商人として取引相手の考えを読み、狡猾な政治家顔負けの駆け引きを行う彼だが、自分へ向けられる遠まわしの好意を受け止めるには幼稚過ぎたのだ。
「愛して、受け止め、ずっと隣にいろ。命令だ」
　不器用な主人の告白へ、それ以上に不器用なメイドは微笑んで頷いた。
「わかった」
　誰より傷ついて生きてきた主人は、命令に従う部下しか必要としない。カトルや五飛のように純粋な好意で接しても、決して受け止めはしないだろう。だが、執事シフェルのように命令に従えば・・・デュオはヒイロを認めてくれる。
　そして、特別な扱いに罪悪感を感じるヒイロもまた、命じられることで自分自身の甘えを許すことが出来た。
「触れて・・いいか？」
　恐る恐る尋ねるデュオへ、意地悪な笑みを浮べたヒイロが小首を傾げる。
「命じればいいだろう？　俺はおまえの専属メイドだ」
　甘えるように手を伸ばしてデュオの首に回し、ヒイロは耳元で囁いた。反射的に抱きとめたデュオの腕に力が込められる。
「そうだな・・おまえは・・・オレだけのメイドだったな」
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....

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　来客の相手をしながら、ずっと妄想を膨らませ・・・書いてみたらこの体たらく。どうしてくれよう、自分（怒）！　そろそろエロ入れよ！　でもってヒイロのメイド服を脱がしながら・・・＃＆％‘＃‘＊・・・・←妄想が暴走しています・・・ケダモノから人間に戻るまでお待ち下さい・・・・。
　ヒイロに「ご主人様」と呼ばせてみたかったが、どうもこの展開だとベッドの中では無理そうなので、今使ってみました♪　ちょっと固い雰囲気なのが残念；
　追伸：今回のチェックポイント！　デュオ、マザコンだったんだ！！　←ここが重要です、期末テストに出ます（笑
　
【拍手コメント御礼】　●さく様・・・裏設定に基づき、近々続きを書くかも知れません。問題は綾雅の時間があるかどうか、そして脳みそが妄想についていけるか！　この2点でしょうね（笑
　もるもっち様・・・シフェルも一応（！）執事ですから、格好は大事でしょう。どっかのマクマで執事な人と違って前髪を長いまま垂らしっぱなしはNGです（笑　きっと腫れた頬を、ヒイロが優しく撫でてくれますよ・・・あ、それいいな。ほっぺにチューくらいさせちゃおうかな？