W2×1　【MiyabihimeA】

　　　***貧乏くじ　№2***


「貴様っ！」
　怒り心頭の五飛は、幸いかすり傷だった。だが場所が悪い。よりによって額に傷を負ってしまい、切り傷から流れた血に青ざめたトロワは病院に顔を出したデュオを睨みつける。
　別に入院する傷でもないが、トロワの懇願を受け入れた五飛は大人しく検査入院していた。
「本当に悪かったって・・ゴメン」
　周囲を飾るのは大量の花、もちろんカトルからだ。今回スイーパーに仕事を依頼したのはカトルで、トロワから恐怖の通信を受けた直後、ご機嫌取りに贈って来たらしい。
「次の任務は貴様にも協力して貰う」
「了解。それで許してくれるのか？」
「・・・ああ」
　渋々頷いた五飛だが、目の前で謝るデュオは安堵の息を吐いた。ケガした五飛を見たトロワが怒りに任せて繰り出した蹴りをまともに受けたデュオは、引き摺っていた足を放り出して椅子に座る。
「まだ痛むか？」
　小首を傾げる心配そうなヒイロに、苦笑したデュオが肩を竦めた。
「それなりに・・」
　剥離骨折で全治６週間の診断を、さらりと何でもない風を装う。一応任務でのケガという事にしているが、実際はトロワの蹴りを膝の下で受けたことによる負傷だった。
「まともに受けるからだ」
　半歩も後ろへ引けば、威力を半減させることが出来た。しかしそれをしなかったデュオへ怒ったような声色で吐き捨てたヒイロの手を引き、自分の膝の上に座らせる。大人しくしている恋人の頬にキスを降らせた。そっと黒髪に指を絡めて梳く。
「避けたら殺されちゃうぜ」
　確かに・・・五飛もヒイロも同じ感想を滲ませた視線を交わす。まだ険悪な空気を滲ませるトロワは、デュオを一瞥したきり目を合わせようとしなかった。さすがのデュオもお手上げ状態だ。
「トロワ・・・許してやれ」
　しかたなく執り成す五飛に、不満そうだが頷いたトロワの姿を見ながら「お前にそっくりだ」と呟いたヒイロの唇へ、苦笑いしたデュオが唇を重ねて言葉を塞いだ。　

　　　***後日談***
　敵以外のエージェントが居たことに気づかず爆破したスイーパーは、当然ながらプリベンターから正式な抗議を受け・・・数回の無償任務を条件に手打ちした。無償とされた筈の任務に係わる経費がデュオの報酬から引かれたことは、事務処理をしたシフェル以外・・・誰も知らない（笑）
　ちなみに、経理操作にデュオが気づいたのは数ヵ月後だった。

　こんな風に続いてみるのは初めてですね。シフェルはしっかり責任をデュオに押し付けて逃げました（大笑）　普段苦労した分だけ、こういう役得がないと可哀想ですから。
　五飛は額以外ほぼ無傷、トロワは完全に無傷、当然ヒイロも大丈夫でした。その中でデュオだけが任務によるケガではなく、トロワのくるくる回転３倍増しの飛び蹴りによる剥離骨折です（苦笑
　トロワもデュオに飛び蹴りした時点で、結構気は済んだでしょう。そこで避けてたら、本当に殺されかねない（大笑）　デュオが逆の立場なら、やっぱ同じように攻撃しちゃいそうだしね。