W2×1　【MiyabihimeA】

　おまえはここで待て。そう命じて飛び出したデュオが銃弾飛び交う廊下を転がり、下から敵を撃つ。５人のターゲットのうち３人を倒し、身を起こして右腕を中心に体を縦にする。的を小さくすることで当たりにくくする、基本的な立ち位置で残る２人の額と心臓を撃ち抜いた。
　周囲を確認し、壁の向こう側で様子を窺う部下に声をかける。
「もういいぞ」
　素早い身のこなしでデュオの死角をカバーするセドの優秀さに、目を細めた。普段より乱れた呼吸を必死で抑えるセドの限界は近い。
　セドが動けなくなるのと、タイムリミットの１３分・・・どちらが早いか？
　０６１５時までに敵を殲滅できなければ、スイーパーの作戦は失敗だ。そして噂は素早く世界中に知れ渡るだろう。面子が潰れるより、今まで築いた信頼関係が崩れるのを避けたい。報復作戦に失敗すれば・・・他組織からの攻勢が始まり、今回以上の犠牲を強いられるのは確実だった。
　結局この世界は実力が物を言う。キレイ事では済まないのだ。”死神デュオ”を筆頭に、”針魔のシフェル"、”雷破のヴィリ”、”トール・ジャック”など・・数限りなく二つ名を持つ上級エージェントが所属しているスイーパーは、目に見える”彼ら”によって自らの身を守り、エージェントの実力で大きくなった組織だった。その実力差や恐怖で威圧した組織は、スイーパーが弱体化したと判断すれば襲いかかってくるだろう。
「・・・・さて、どうしたもんか」
　呻くように呟いて、ちらりとセドの状態を確認する。と・・・インカムから次々と報告が入ってきた。
《任務完了、Ａ班撤収します》
　シフェルの声を皮切りに、ヴィリやイヴァンが続く。
《Ｂ班、撤収する。任務完了》
《こちらも同様です》
　共有している通信から戦況を把握し、どうやら残っているのはジャックの班だけらしい。申し訳なさそうに俯くセド、彼がいない事で報告が出来ないジャックへデュオが笑みを含んだ声を掛けた。
「ジャック・・セドならオレと一緒だ。任務遂行状況を報告しろ」
《・・・殲滅した。本当にセドがいるのか？》
　任務を完了した後、必死で行方不明の部下を探していたジャックの声に、小声で「すみません」と返したセドへ苦笑混じりの溜め息が届いた。
「全班撤収しろ。オレは首謀者３人を始末する」
　すべてが予定通りだった。
　組織を構成するエージェントや技術者は４班に分けた部下に任せ、遊撃兵として動くデュオが敵組織の幹部を消す。変更があるとすれば、セドの存在だけだ。
　異口同音に返された承諾を確認し、デュオが銃をベルトに挟む。代わりに腕時計から引っ張り出したワイヤーを右手に絡めた。ピアノ線以上の強度を持ち、何より鋭く金属さえ切断するワイヤーの使い手はスイーパーでも片手ほどしかいない。
「邪魔だけはするなよ」
　肩を滑った三つ編みを背に弾き、デュオはにやりと笑う。それにぎこちなく微笑み返したセドがごくりと喉を鳴らした。緊張と恐怖に喉が渇く。肌が粟立つ感覚をやり過ごし、歩き出した上司に従った。
　・・・何だ？　酷く嫌な感じがする。
　眉を顰めたデュオが足を止めた。後ろにいる微かな気配が部下だと言い聞かせなくては、思わず殺してしまいそうだった。それほど全身が危機を訴えている。だが、その本能に近い警告が示すのは、セドではない。
　苛立ち任せに舌打ちしたデュオは、レイルに調べさせた情報を元に薄暗い廊下を曲がった。この先にターゲットが逃げ込んでいるのは間違いなく、３人を殺せば終了だ。
　数歩進んだデュオは、全身の毛穴が開くような感覚に身を震わせた。毛が逆立つ感覚は危険を告げている。咄嗟に後退ろうとして、背後の部下に気づく。
　―――――間に合わないっ！！
　何も気づいていないセド。それは経験の差か、本来持つ能力の違いか。もしかしたらケガの所為で乱れた集中力が原因かも知れない。自分だけなら間に合うと計算しながらも、セドに手を伸ばした。
「下がれっ」
　彼を突き飛ばしてから転がるデュオが、反射的に身を丸める。
　直後、通路を閃光と振動、激しい衝撃が襲った。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....

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　ここ数日ＵＰできなかったので、頑張って二つ書いてみました・・・・。ヘロヘロですが・・・；；
　デュオさんが傷つくまでが長すぎる。一体何処まで行くのか、もしかしたら本で発行できる長編になるかも　まぁ、それはそれでヨシ！　←いいのか？　これでやっとデュオが捕まります。よかったぁ！！