W2×1　【MiyabihimeA】

「・・はい・・・」
　反射的に電話を手に取ったデュオが、寝起きとは思えないはっきりした声で応じる。エージェントにとって夜明けの電話は不吉なものが多く、今回も取りも直さず該当した。
「・・・それで？・・・・ああ・・・・分かった、すぐに行く」
　隣で蒼い目を瞬いたヒイロが、情事後の気怠さを感じさせない動きで身を起こす。赤い所有印が目を奪う白い肌を惜しみなく晒し、渋い顔をした恋人を見下ろした。
「何があった？」
　電話を切った直後に問いかけられ、ぐしゃりと前髪を掻き乱したデュオが溜め息を吐いた。
「事件が終わってないとさ。ある意味、予想通りだな」
　昨日の鎮圧後、まだこの地に留まったのは”懸念材料”が残っていたからだ。最初から今の事態を想定していた彼らは、任務に入る前にホテルを予約した。
　地元警察からの電話に、やはり・・とデュオの顔に苦笑いが浮かぶ。
「・・・どっちだ？」
「後で確保した方・・」
　くすっと笑ったヒイロが黒髪を揺らして笑う。
「ならば、賭けは俺の勝ちだ」
　両手を上げて降参のポーズを取ったデュオは、肩を竦めてヒイロを見やる。
「了解、オレが片付けてくるよ」
　賭けに負けたのだからしょうがない。起き上がったデュオがシャワーを浴びに向かう間、ヒイロは愛用の銃を引き出して手入れを始めた。デュオはああ言ったが、彼だけに任せる気はない。あくまでもこの作戦の責任者はヒイロなのだ。
　一度バラして丁寧に掃除してから組み直す。がしゃ・・と硬い音を立てて撃鉄を上げた銃の照準をドアへ向けた。ちょうど髪を拭きながら顔を出したデュオへトリガーを引き絞る。
「おいおい・・銃弾がなくても心臓に悪いぜ」
　苦笑するデュオだが、避ける様子は見せなかった。それを信頼と呼ぶのか、それとも互いを知り尽くしたことに由来する油断か。にやっと口端を持ち上げて笑うデュオの表情が、ひどく物騒な気配を匂わせる。
「シャワー・・浴びる？」
「・・・ああ」
　低く掠れた声で尋ねられ、背筋を震わせたヒイロが吐息混じりの返答を漏らす。昨夜の情事を思い出させる声音の主は、上半身裸の逞しい胸に恋人を引き寄せた。素直に身を任せるヒイロが僅かに腕を突っ張る。
「・・？」
「大人しく待っていろ」
　腕の中で爪先立ちになったヒイロが耳に囁きを落とし、するりと猫のように身を躱してドアへ歩き出す。後姿を見送ったデュオは、ベッドの乱れたシーツに腰を下ろして呟いた。
「ったく・・・反則だろ」
　反応しそうになった自身を眺め、肩を落とす。無情に閉じられたドアに視線を向けて、乾かした長い髪を編み始めた。

　街はまだ朝のザワメキに包まれている。
　出勤や通学に忙しい市民を横目にデュオはハンドルを横道へ切った。狭い路地を入った先、汚いビルの前で止まる。古い建物に見えるが、近付いたデュオは目を細めて壁を蹴飛ばした。
「偽装か」
　築年数の若いビルだ。まだ美しい壁に覆われている筈の建物を故意に汚して、周囲に馴染むよう偽装されていた。普通なら考えられない行動の理由はおそらく・・中の最新設備を隠す為だろう。
「オレが先行でいいな？」
　銃の安全装置を外すデュオの表情は、今の状況を楽しんでいる。頷いたヒイロにウィンクをひとつ残し、デュオはビルへ身を滑り込ませた。
　薄暗い廊下、硬い床を足音もなく歩く。しなやかな身のこなしと驚異的な身体能力が可能とする所作も、彼らにとってはすでに日常だった。
　行き止まりになる一つ前のドアから僅かな光が漏れている。近付いたデュオは深呼吸して無造作にドアを開いた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....

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　はい、ちょっと伏線っぽい？？　つうか、エロで終わりだと何だし・・まだ格好良さが足りないので頑張ります！
　ちなみに、エロ神様はまだ見つかりません（笑）　

【拍手コメント御礼】　匿名希望様・・・あははっ、年末年始なので奮発してエロってみました（・・え？
　もるもっち様・・・吸血鬼でぉより激しいですか？　おや？？　なんか受け受けしいヒイロ様を嫌った結果、誘ってしまえ！みたいな結論に達しました。デュオも強気になりきれないあたりが、非常にヤツらしい（笑