W2×1　【MiyabihimeA】

「・・・ここも・・」
　差し出された手についた傷を、チュッと音を立てたキスで消毒するデュオが眉尻を下げる。
「ゴメンな、後は大丈夫？」
「ん・・平気」
　首筋に掛かる息が擽ったいのか、ヒイロはくすくす笑いながら首を竦めた。美しい外見で幼い仕草、可愛らしい受け答えが戦場の殺伐とした空気をバラ色に染めていく。
　周囲で様子を窺うエージェント達がいっそ哀れな程だった。エージェント稼業は基本的に危険と隣合わせであり、また異性と知り合う機会が少ない職場である。従って独身者ばかりの彼らにとって、実弾より危険な光景であり、また衝撃であった。
　プリベンターでも１、２を争う実力派の美人が、デレデレに甘えている姿―――。
　う・・・羨ましい。
　羨望と妬みを全身に浴びながら、デュオは奥さんの腰に背中から手を回して引き寄せる。
「ね、明日は休みでしょ？　朝まで付き合ってくれる？」
　下手（したて）に出たデュオの低い声に、ぴくりと震えたヒイロが振り返る。蒼い瞳へ微笑みを向けるデュオが首を傾げた。答え待ち・・・だが、叶えられると知っている確信犯の頬を両手で包み、ヒイロは小さくコクンと頷く。その愛らしさに、息を呑んで見守っていたエージェントが一斉に前かがみになった。
「あれ？　五飛、トロワ。どうしたんだ？　こっち来いよ」
　商売敵のトップエージェントという肩書きと、現在はヒイロの捕虜という立場も無視したデュオが、にこやかに２人へ手を振る。指名された２人は互いに顔を見合わせ、苦笑したトロワに促されて五飛が憮然とした顔で歩み寄った。
「貴様、スイーパーに協力したのか」
「ああ」
「感心しないな」
　五飛へ平然と頷いたデュオだが、続くトロワの指摘に目を逸らした。
　今日はプリベンターで仕事の予定だった。つまり、本来ならこの仕事でデュオが協力しなければならないのは、雇い主であるプリベンターの筈だ。的確に痛い場所を突かれ、引き攣った笑みを作ったデュオが溜め息を吐いた。
「・・・後で”情報”を回すよ」
「ならばいい」
　仕事は終了だ。
　入手すべき情報ディスクの中身があれば、プリベンターに不満はない。引き上げ始めたプリベンターのエージェントに同行するヒイロに三つ編みを掴まれ、捕虜扱いのデュオもプリベンターに連行された。
　捕らわれのデュオを引き取る為に、スイーパーがレディ・アンと取引したのは言うまでもない。「先に行け」と命じられた時、嫌な予感がしたんですよ・・・・とは、情報奪還に成功したシフェルが上層部に漏らした愚痴であった。

　始末書を鼻歌交じりに書き上げて署名し、一度斜め読みして内容を確認する。明日は楽しい休日、しかもヒイロと一緒である。まかり間違っても書類のミスで呼び出されないようチェックを終えたデュオは、提出用書類の一番上に始末書を乗せた。
「デュオ・・・ぷりん・・・」
　食べたい。
　言葉より雄弁に真剣な眼差しで訴えかける妻の壮絶な色気によろめきながら、デュオは冷蔵庫から自慢のプリンを取り出す。任務完了後すぐにヒイロの為に作ったプリンは、ようやく固まったところだった。ぷるぷると柔らかそうなプリンを、銃を扱うより慎重に皿へ移し、情報ディスクより大切にヒイロの前まで運ぶ。
「はい、お待たせ♪」
「あ～ん」
　ぱくっと口をあけて強請るヒイロへ、スプーンで掬ったプリンを食べさせる。もぐもぐ口を動かしていたヒイロの表情が嬉しそうに笑み崩れた。
「・・・貴様ら、ここをどこだと・・」
　頭痛に襲われた五飛が額を押さえながら呟くと、きょとんとした顔のデュオが何か納得したように冷蔵庫を指差す。
「ああ、食べるなら自分で出してくれ」
「ひとつ貰う」
　あっさりトロワが冷蔵庫へ向かい、プリンを手に戻ってきた。ソファに縋りついている五飛に緑の瞳が注がれる。訴えている気配を感じながら、赤面した五飛は顔を上げない。根競べのような２人を他所に、デュオはヒイロに「あ～ん♪」とプリンを食べさせていた。
「・・・・・わかった」
　ついに根負けした五飛がトロワの手からプリンを奪い、スプーンで差し出す。ぱくっと食いついたトロワの幸せそうな顔に、五飛も苦笑せざるを得なかった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 The END or....？

　

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　ツンデレではなく、デレデレなヒイロ♪　デュオは幸せ者ですね。そして雅姫のヒイロは「プリン好き」が定着しました。結構甘党です。綾雅もプリンは好き♪　←だから？（冷笑

　ユウキ様、こんなんでどうでしょう？？？
　少し足りなかったでしょうか？　頑張れる範囲で頑張りました！