W2×1　【MiyabihimeA】

「・・・・・だってさ、告白されちゃったし・・経験者だろ。アドバイスくれよ」
　顔を赤らめて目を吊り上げた五飛が口を開くより、隣でグラスを磨いているトロワが溜め息を吐く方が早かった。顔の半分を覆う前髪の所為で片方だけの緑瞳が、苦笑の色を浮べて細められる。
「五飛を揶揄うな」
「揶揄うって・・・・人聞きの悪い。本気で悩んでるんだぜ？」
　前髪をくしゃくしゃ掻き乱すデュオの様子に、トロワと五飛は顔を見合わせた。一番年下のデュオを生まれた頃から知っている彼らだが、ここまで悩んでいる姿は初めてだ。それだけ真剣に考えているのだろう。
　ふっとトロワの口元が笑み崩れた。
「何？」
　磨き終えたグラスを棚に戻したトロワが笑う気配を察して、不貞腐れた表情で尋ねるデュオの頭をぽんと叩く。子ども扱いされて不満そうなデュオが唸る。だが、自分の倍近く生きた先輩相手に噛み付く気はなかった。
「いっそ、”引き入れ”たらどうだ？」
　目から鱗の提案に、大きな目をさらに見開いたデュオが呟く。
「同族に？」
「前例がないわけでもない」
　意味深な視線を受け止めた五飛が眉を顰めた。血族最後の子供であるデュオが生まれるより数百年前、ある国の皇族であった五飛を吸血鬼に”引き入れ”たのはトロワ自身だ。
　吸血鬼は生涯に１人だけ、番（つがい）となる相手を選ぶ。それは人間であっても、同族であっても構わなかった。だが、人間であった例は極端に少ない。一番の理由は吸血鬼側の遺恨だった。
　直接の血縁でなくとも、同族を狩る人間と恋に落ちる可能性は低い。稀に選んだとしても、人間の寿命は夏に見かけた蝶ほどの短さだ。そこで己の血を与えて同族に引き込むという術（すべ）が伝わっていた。
　トロワと五飛以外に使った同族を知らない。
「そうだなぁ・・・」
　生返事をするデュオに五飛が嘲笑を向けた。美人なだけに、傲慢で怖いくらい似合っている。
「覚悟がない、か？」
　むっとした顔で身を起こしたデュオが、バンとカウンターに手をついて立ち上がる。乱暴な仕草を咎めるでもない２人を睨みつけて踵を返した。
「何処へ行く？」
　まだ嘲笑の響きを滲ませた五飛の声を、振り返らずに切り捨てた。
「ヒイロのとこだ」
　それ以上何も言わずに荒々しくドアを閉めたデュオを見送り、トロワは五飛へ首を横に振った。
「嗾（けしか）けるな」
「あいつは考えすぎる。迷う時点で答えは出ている筈だ」
　突き放しているようで五飛は情に厚い。特に身内と見做した存在に対し、どこまでも優しいのだ。分かりやすく優しさを与えるトロワとは正反対に見えるが、五飛の優しさは温かく深かった。
　子供だったデュオを守護した過去を懐かしむように目を伏せ、五飛が隣のトロワへ向き直る。
「デュオも子供ではない。自分で選んでもいい頃だ」
「・・・ああ」
　トロワが静かに同意した。
　確かに彼はもう番を見つけてもいい年齢だ。あれだけ人間を見下していたデュオがヒイロを気に入ったのなら、それが答えなのだろう。
「お前は俺を選んで後悔したか？」
「後悔したことはないな」
　差し伸べた手を取った五飛を引き寄せ、強気な眼差しを受け止めながら唇を重ねた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....
　
　

---

　トロワパパと五飛ママに報告しに来た息子ってカンジ？（笑
　最初は五飛とトロワはデュオより若く生まれた吸血鬼にする予定でしたが、あっさり撤回。育ての親になってもらいました。だって・・デュオが一番子供っぽいんだもん（大笑

【拍手コメント御礼】　もるもっち様・・・デュオの顔が平凡だったら・・最低野郎ですね。顔が良いから許される。そうじゃなけりゃ、ただの○○魔ですわ！　飲んだ量は間違いなく「４００ｃｃ」以上でしょう！　だって、貧血通り越してヒイロがふらついてましたよ？　よっぽど美味しかったんだろうなぁ♪