W2×1　【MiyabihimeA】

　あれは、暑い夏の午後―――汗が滲む肌に擦り寄るデュオを押しのけるのに夢中になっていて、つい深く考えずに返事をしてしまった。
「カトル達と来週会うじゃん？」
「ああ・・・暑いから近寄るな」
「でさ、着てく服だけど・・」
「服・・？」
　ぺちんと、不埒な動きで太股をまさぐる手を叩く。
「オレが選んだの、着てくれる？」
「今更何を・・・」
　お前がいつも勝手に決めているだろう。
　眉を顰めたヒイロが、懲りないデュオの手の甲を抓る。
「痛っ・・・」
「離せ！」
「じゃあ、交換条件な。絶対にオレが選んだ服で出掛けるんだぞ」
「わかったから・・離せ」
　本当に暑かったのだ。茹（う）だる様な陽射しの中、べったりと背後から抱きつく恋人の手や腕を払い除けるのに必死で、よく考えもせず頷いた。あれが原因だと目を眇める。
「あのさ、そろそろ着替えてくれない？　間に合わなくなるぞ」　
　遅刻は嫌だろ？　笑顔で促す元凶を振り返り、ヒイロは「わかっている」と苛立ちを込めた声で返した。そう、今更約束を破ることは出来ない。事実、あの後のデュオはあっさりとヒイロから離れてくれた。今思えば、今日の約束を守らせる為だけに、暑い中絡みついてきたのだろう。
　たとえ策略に嵌ったとしても、約束は約束だ。
　覚悟を決めて、白い服を手にシャワールームへ向かう。ドアの前で立ち止まり、顔だけ背後を振り返った。笑顔でひらひら手を振る恋人へ、しっかり釘を刺す。
「着替えてくるが・・・似合わなくても文句を言うな。それと・・・」
　似合わないなんて有り得ないと力説する恋人が近付いてくるのを、引き攣った笑顔で押し留める。
「覗くな！」
　ばたんと鼻先でドアを閉めた。様子を窺うが、どうやら諦めて離れたらしい。リビングのソファが軋んだ音を立て、ほっと一息ついた。だが、腕の中の白い服の存在に溜め息に変わる。
「・・・あいつは何を考えてるんだ」
　服を皺にならないように置くと、ヒイロはシャワーを浴び始めた。

　リビングで待ちかねたデュオの前に、おずおずと足を進める。鏡で確認したが、どう考えても自分には似合わないと思う。足元がひらひらして頼りないし、体系を強調するデザインも困惑を深めた。
「すっげぇ・・・滅茶苦茶似合う！！」
　絶賛するデュオに、ヒイロは小首を傾げる。
　コレが・・・・か？
　白いワンピース姿に、青いボレロを羽織った可憐な乙女・・・という真実の姿は、ヒイロの目には映らないらしい。腰を絞った白いワンピースにはレースをふんだんに使い、ボレロを花柄の透かしにすることで、清楚な雰囲気を醸し出す。己の見立てに満足しているデュオが近付き、ヒイロの腰に腕を回して抱き寄せた。
「本当に可愛い♪　さすがオレのヒイロ」
「・・・お前の物になった記憶はないが・・・この格好おかしくないか？」
　裾を遠慮がちに摘む。
　デュオがつけた”オレの”という冠言葉をしっかり否定しながら、ヒイロは賞賛してくれる恋人を上目遣いに見る。笑顔で頬や額にキスを降らせるデュオが、耳元で囁いた。
「そんな顔してると、襲いたくなっちゃうよ」
　すでに自分の着替えを終えているデュオが促すまま、ヒイロは玄関へ向かう。そして・・・用意されていた靴を見て、再び困惑顔で溜め息を吐いた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....

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　女の子ヒイロ・・・初書きかもよ？　すっごい昔にゲスト原稿なら書いたかも知れないけど・・・まったく記憶にありません。う～ん、難しい；

【拍手コメント御礼】　もるもっち様・・・鼻血、噴いたかも知れません（笑）　というか、兄にとんでもないプレゼントを貰った弟は、ヒイロの誕生日に何をプレゼントしたらいいんでしょうか。ちなみに、綾雅はもう眠い時間です（現在：17時・・・苦笑）

【コメント御礼】　夜蝶●緒様・・・中途半端な伏字ですみません。不正アクセスの件ですが、まず間違いなく別人です。少なくとも１分間に数十回のアクセスを朝９時頃から夜まで続けるには、専用のソフトなりパソコンが必要となりますので、その点ご安心ください♪　ずっと見ていても、不正アクセス扱いにはなりません。あと、犯人はすでに特定できていますので、プロバイダーから問い合わせが来ていなければ無関係です。ご心配いただき、ありがとうございます。