W2×1　【MiyabihimeA】

素直に応じて下がるヒイロは、現在光皇が顕現している。分かっていても、器はヒイロであり中に宿る魂もヒイロなのだ。
　手を拱（こまね）いて、おめおめ奪われる気はなかった。
≪ほう・・・たかが器風情が、随分と大きな口を叩くものだ≫
　古代神語を理解できないサリファ達は顔を見合わせ、デュオの暴挙とも思える行動に驚いている。
「”器”？オレはアンタに従う気はないぜ」
≪従わせる方法など、幾らでもある≫
　平然と切って捨て、闇帝は手を中空へ差し伸べた。
≪デスサイズ≫
　相棒として共にあった武器は、敵である闇帝の手に舞い降りる。黒い柄が、赤を帯びて光り輝いていた。歓喜の感情が周囲に満ちる。
　デスサイズの歓喜を感じるまでもなく、もうこの手に戻らないのだとデュオは悟っていた。それ故に未練を持たず、己の敵として割り切る。
　だが・・・そこで気づいた。
　自ら招いた失態に、舌打ちする。
「・・・”真紅の百合”と”鈴風の矢”・・・」
　レイルの唇から漏れた単語に、残るメンバーも悟らざるを得なかった。すでに闇帝の手に、３種の神器の２つが揃っている事実を・・・・。
　それは世界の滅亡が目前に迫っているのと同義語だった。
≪残るは、”月の鏡”のみ・・≫
　口角を持ち上げて笑う表情さえ、鏡に映したようにそっくりな闇帝がばさりと翼を広げる。世界中を多い尽くしたように、空は色を失い、光が薄れて急激に世界は闇に包まれた。
「誰がやるかよ・・」
　緊張に乾いた唇へ舌を這わせたデュオが吐き捨てる。
≪奪い取る算段は整っている≫
　闇帝の発言に、背後の光皇が身を震わせた。
≪デュオ、お前・・・デスサイズの召還に血を使っていたな≫
「ああ・・・それが？」
≪支配されるぞ！≫
　光皇の言葉に嫣然と肯定の頷きを見せる闇帝は、左手のデスサイズに静かに命じた。
≪”器”をこれに≫
　デュオの身に何が起きたのか。
　状況を理解できたのは、光皇と闇帝だけだった。唸るデスサイズに引き寄せられるように、デュオの足が前に進む。銀色の刃の下へ、ゆっくり進む足を止める術がないことに気づき、愕然とした表情を浮べた死神が必死に抵抗を試みた。
　内側から操られるような感覚に、左手を強く握り締める。爪が突き刺さって血を流した。正気を保とうとさらに爪をつきたて、ふと気づく。
　少しだけ・・・軽くなったような感覚がした。
　左手を持ち上げ、己の左胸に滑らせる。長い爪を肌に突きたて、魔力を爪先に集中させた。
「デュオさんっ！」
「やめろっ！」
　付き合いが長い分、デュオの行動を先読みしたシフェルとレイルが叫ぶ。しかし、伸びた爪はデュオの胸を貫き・・・・苦痛の呻きと共に引き抜かれた。
≪”世界”よ、我に従え。汝の主を救う為に・・≫
　光皇の声が高らかに響いた。創造主ではなく、だがそれ以上に世界に干渉する力を持って存在する輝かしい”光の皇（おう）”へ、世界と云う集合体がひれ伏す。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....

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　はい、デュオはまた痛い目にあっています。それにしても光皇様ったら、デュオと共闘するつもりでしょうか？　だとしたら、心強いね♪　

【拍手コメント御礼】　まぁや・・・うん、ついに佳境に入りました。謎解きを含め、書き忘れのないようにしないと（苦笑；
　もるもっち様・・・光皇も別に闇帝を嫌いなわけじゃないんだけど、あまりに身勝手すぎる闇帝の振る舞いに呆れてるみたい。その点、気を使いすぎるデュオの方がお買い得（？）ですよ！　もう少し同一人物っぽい感じにしようかと思ってたんですが、今になるとこのくらい別人の方が書きやすい（笑）　お外で読んだ本を、どこかに置き忘れないでね（切実；）