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二次創作を中心に活動する「miyabihime」のSS置き場。無断転載や複写・プリントアウトはご遠慮ください。

プロフィール

綾雅&秘姫

Author:綾雅&秘姫
GWに魅せられ、早23年!
2×1万歳!!

*更新履歴*

GW21 BSR503 etc 2019/07/02
 
かごの檻【24】
2019/06/28
 
かごの檻【23】
2019/06/24
 
かごの檻【22】
2019/04/25
 
かごの檻【21】
2019/04/23
 
かごの檻【20】
2019/04/04
 
かごの檻【19】
2019/03/07
 
かごの檻【18】
2019/02/23
 
かごの檻【17】
2019/01/29
 
かごの檻【16】
2019/01/16
 
かごの檻【15】
2019/01/12
 
かごの檻【14】
2019/01/01
 
年末年始【3】
2018/12/31
 
年末年始【2】
 
年末年始【1】
2018/12/30
 
かごの檻【13】
2018/12/24
 
2018クリスマス
 
かごの檻【12】
2018/12/23
 
かごの檻【11】
2018/12/03
 
かごの檻【10】
2018/11/30
 
かごの檻【9】
2018/08/24
 
愛執【36】完
2018/08/17
 
愛執【35】
2018/08/07
 
愛執【34】
2018/08/01
 
愛執【33】
2018/07/28
 
愛執【32】
2018/07/27
 
愛執【31】
2018/07/08
 
愛執【30】
2018/07/05
 
愛執【29】
2018/06/09
 
愛執【28】
2018/06/02
 
愛執【27】
2018/04/14
 
愛執【26】
2018/04/10
 
愛執【25】
2018/04/07
 
愛執【24】
2018/04/04
 
愛執【23】
2018/04/01
 
愛執【22】
2018/03/30
 
愛執【21】
2018/03/28
 
愛執【20】
2018/03/25
 
愛執【19】
2018/03/22
 
愛執【18】
2018/03/19
 
愛執【17】
2018/03/15
 
愛執【16】
2018/03/14
 
愛執【15】
2018/03/13
 
愛執【14】
2018/03/11
 
愛執【13】
2018/03/09
 
愛執【12】
2018/03/08
 
かごの檻【8】
2018/03/05
 
愛執【11】
2018/03/01
 
かごの檻【7】
2018/02/26
 
愛執【10】
2018/02/25
 
かごの檻【6】
2018/02/24
 
かごの檻【5】
2018/02/22
 
愛執【9】
2018/02/21
 
かごの檻【4】
2018/02/18
 
愛執【8】
2018/02/13
 
かごの檻【3】
2018/02/10
 
愛執【7】
2018/02/09
 
かごの檻【2】
2018/02/06
 
愛執【6】
2018/02/05
 
かごの檻【1】
2018/02/02
 
愛執【5】
2018/02/01
 
司祭堕天使【45】完結
 
司祭堕天使【44】
2018/01/31
 
司祭堕天使【43】
2018/01/30
 
愛執【4】
2018/01/28
 
司祭堕天使【42】
2018/01/21
 
愛執【3】
2018/01/16
 
司祭堕天使【41】
2018/01/10
 
愛執【2】
2018/01/07
 
司祭堕天使【40】
2018/01/06
 
愛執【1】
2018/01/05
 
司祭堕天使【39】
2018/01/01
 
2018新年SS
2017/12/31
 
2017年末SS
2017/12/30
 
司祭堕天使【38】
2017/12/29
 
司祭堕天使【37】
2017/12/27
 
司祭堕天使【36】
2017/12/24
 
2017クリスマス【2】
 
2017クリスマス【1】
2017/12/23
 
司祭堕天使【35】
2017/12/18
 
司祭堕天使【34】
2017/12/16
 
司祭堕天使【33】
2017/11/28
 
司祭堕天使【32】
2017/09/15
 
幻影【20】完
2017/08/30
 
幻影【19】
2017/08/25
 
幻影【18】
2017/08/21
 
幻影【17】
2017/08/07
 
幻影【16】
2017/08/05
 
幻影【15】
2017/08/02
 
幻影【14】
2017/08/01
 
幻影【13】
2017/06/16
 
司祭堕天使【31】
2017/06/06
 
幻影【12】
2017/05/27
 
幻影【11】
2017/05/20
 
司祭堕天使【30】
2017/05/11
 
幻影【10】
2017/05/07
 
司祭堕天使【29】
2017/05/05
 
司祭堕天使【28】
2017/05/04
 
幻影【9】
2017/04/30
 
幻影【8】
2017/04/20
 
司祭堕天使【27】
2017/04/03
 
幻影【7】
2017/03/12
 
司祭堕天使【26】
2017/03/10
 
幻影【6】
2017/03/04
 
幻影【5】
2017/02/23
 
司祭堕天使【25】
2017/02/17
 
幻影【4】
2017/02/12
 
司祭堕天使【24】
2017/02/11
 
幻影【3】
2017/02/10
 
司祭堕天使【23】
2017/02/04
 
幻影【2】
2017/02/02
 
司祭堕天使【22】
2017/02/01
 
幻影【1】
2017/01/29
 
司祭堕天使【21】
2017/01/26
 
司祭堕天使【20】
2017/01/25
 
司祭堕天使【19】
2017/01/24
 
司祭堕天使【18】
2017/01/23
 
司祭堕天使【17】
2017/01/18
 
司祭堕天使【16】
2017/01/15
 
司祭堕天使【15】
2017/01/12
 
司祭堕天使【14】
2017/01/10
 
司祭堕天使【13】
2017/01/08
 
司祭堕天使【12】
2017/01/06
 
司祭堕天使【11】
2017/01/05
 
司祭堕天使【10】
2017/01/01
 
新雪
2016/12/31
 
司祭堕天使【9】
 
捕獲
2016/12/30
 
災難
2016/12/26
 
篭城
2016/12/25
 
雪原
2016/12/22
 
司祭堕天使【8】
2016/12/13
 
司祭堕天使【7】
2016/12/11
 
司祭堕天使【6】
2016/12/06
 
お題【7-10】完結
2016/12/04
 
お題【7-9】
2016/11/30
 
お題【7-8】
2016/11/29
 
お題【7-7】
2016/11/27
 
お題【7-6】
2016/11/25
 
司祭堕天使【5】
2016/11/23
 
司祭堕天使【4】
2016/10/29
 
司祭堕天使【3】
2016/10/18
 
司祭堕天使【2】
2016/10/12
 
司祭堕天使【1】
2016/10/11
 
通販開始
2016/05/02
 
お題【7-5】
2016/04/19
 
お題【7-4】
2016/04/09
 
お題【7-3】
2016/04/08
 
お題【7-2】
2016/04/02
 
お題【7-1】
2016/03/20
 
バレンタインSS
2016/03/05
 
お題【10】
2016/03/04
 
神に2【5】
2016/01/25
 
神に2【4】
 
お題【9】
2016/01/01
 
お正月【1】
 
お正月【1】
2015/12/31
 
年末【1】~【6】
 
年末【1】
2015/12/24
 
クリスマス【1】
 
クリスマス【1】
2015/07/01
 
お題2【8】
2015/06/17
 
お題2【7】
2015/04/28
 
お題2【6】
2015/04/27
 
お題2【5】
2015/04/24
 
お題2【4】
2015/04/22
 
お題2【3】
2015/04/21
 
お題2【2】
2015/4/18
 
お題2【1】
2015/4/17
 
モノカキお題【80】完
2015/4/16
 
モノカキお題【79】
2015/4/15
 
モノカキお題【78】
2015/4/14
 
モノカキお題【77】
2015/04/02
 
【岩今】0402
2015/03/24
 
モノカキお題【76】
2015/03/22
 
とうらぶ【岩今】
2015/03/21
 
モノカキお題【75】
2015/03/20
 
モノカキお題【74】
2015/03/19
 
モノカキお題【73】
2015/03/18
 
モノカキお題【72】
2015/03/16
 
モノカキお題【71】
2015/03/09
 
小題【6-7】完
2015/03/08
 
小題【6-6】
2015/03/04
 
小題【6-5】
2015/03/02
 
小題【6-4】
2015/02/28
 
小題【6-3】
2015/02/27
 
小題【6-2】
2015/02/26
 
小題【6-1】
2015/02/24
 
小題【5-7】完
2015/02/23
 
小題【5-6】
2015/02/22
 
222の日SS
2015/02/21
 
221の日SS
2015/02/01
 
小題【5-5】
2015/01/24
 
≪2015正月≫
 ついったSS
2014/12/31
 
≪2014年末≫
2014/12/25
 
≪2014クリスマス≫
2014/12/04
 
小題【5-4】
2014/09/29
 
ついったSS
 
ついったSS
2014/09/23
 
9/21新刊通販開始
2014/09/19
 
9/21新刊情報UP
2014/07/31
 
小題【5-3】
2014/07/27
 
小題【5-2】
2014/07/24
 小題【5-1】
2014/07/22
 
ついったSS
2014/06/22
 
小題【4-4】
2014/06/20
 >小題【4-3】
2014/06/19
 
小題【4-2】
 
ついったSS
2014/06/18
 >小題【4-1】
2014/06/17
 
モノカキお題【90】
2014/06/16
 >ついったSS
2014/05/26
 
ついったSS
 
ついったSS
2014/05/21
 >ついったSS-2
2014/05/18
 
ついったSS
2014/03/19
 エラー修正
2014/03/06
 モノカキお題【89】
2014/03/05
 サイトデザイン変更
 スマホ対応ページ
 旧携帯ページ廃止
2014/01/01
 >年始SS
 >年始SS
2013/04/16
 >モノカキお題【88】
2013/02/12
 >神に2【3】
2013/02/08
 >モノカキお題【87】
2013/01/02
 
年始SS
 
年始SS
2012/12/31
 年末SS
 年末SS
2012/12/25
 
X'mas企画
 
X'mas企画
2012/12/01
 
モノカキお題【86】
2012/08/19
 モノカキお題【85】
2012/07/23
 モノカキお題【84】
2012/06/20
 
モノカキお題【83】
2012/06/14
 
モノカキお題【82】
2012/06/09
 
モノカキお題【81】
 
61000【2】
2012/06/08
 
61000【1】
2012/05/03
 
春雨
2012/04/12
 サイト内URL一部変更
 裏pass統合、変更
2012/04/04
 
ヴィーナス【6】
2012/04/03
 
幸せ家族計画
2012/03/22
 
白の記憶【10】
2012/03/15
 
白の記憶【9】
2012/03/11
 
白の記憶【8】
2012/03/09
 
白の記憶【7】
2012/03/04
 
白の記憶【6】
 
桃の節句
2012/02/23
 
白の記憶【5】
2012/02/22
 
猫の日
 
猫の日
2012/02/17
 
白の記憶【4】
2012/02/14
 
早めの桜
 
ちよこれいと
2012/02/13
 
白の記憶【3】
2012/02/12
 
白の記憶【2】
 
海の向こう
2012/02/11
 
手錠【3】
 
白の記憶【1】
2012/02/08
 
神に2【2】
2012/02/05
 *お知らせ
 
90000GET申告受付
2012/01/24
 
手錠【2】
 
ヴィーナス【5】
2012/01/23
 
手錠【1】
2012/01/20
 
神に2【1】
2012/01/03
 
2010-2011年末年始
 2010-2011年末年始
 2009-2010年末年始
2012/01/01(11時UP)
 
新年SS
 
新年SS

~ 2009/09/04
 *日記の引越し

2009/09/02
 *モノかき100題【62】

2009/08/31
 *SNSスタート! 2009/08/30
 *モノかき100題【61】
 *リニューアル一段落

2009/08/26
 *リニューアル開始
 *SS凍結解除
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2009/08/21
 *49210GET【20】完結
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2009/08/20
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2009/08/19
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2009/08/18
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2009/08/14
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2009/08/13
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2006.04.12

category: 【GW】長編

死神が下す、最後の審判 【2】

                         ◆◇◆

 2、3日前からデュオの様子がおかしかった。それには気づいていたから、気をつけていたつもりだ。
 出来るだけ1人にしなかったし、常にデュオの気配を探っていた。表立った変化はなく、俺は少し安心していたのかも知れない・・・。
 近くでずっと見ていたが、それだけでは足りなかったらしい。
 突然の出来事に、ヒイロは一瞬目を瞠るしかなかった。
"
 ―――――真っ赤!

 最初の印象はそれしかなかった。
 脳裏にこびりつくような真っ赤なイメージと、視界から飛び込む鮮烈な色の現実が、デュオを包み込んでいる。すべてを染め切って、赤は散乱していた。
 汚れた壁と、深紅が流れる床。
 飛び散った血量の多さに、ヒイロは言葉を失った。青ざめたデュオの肌の色だけが、赤いバスルームの中で唯一異質なのだ。
 乱れた呼吸はすでになく、うっすら開かれた唇には笑みさえ形作られていた。瞼も指先も、ぴくりとも動かない。当然のように動かない胸と、血管の存在を感じさせない程白い肌が、デュオの命の希薄さを物語っている。
 シャワーは温めに設定され、ただ流れるばかりで、どんどんデュオの血を洗い流してしまう。
 赤は薄まり、それでも色を無くさないほど多かった。
 時間の観念もすべて、赤い湯とともに排水溝に吸い込まれる。
 飛び込んでから、どのくらいの時間が過ぎたのか。
 血液という命の水から、ヒイロは目を離せなくなっていた。


 おかしい、そう感じたのはシャワーの音だった。
 身に付いた習性だろうが、起きた時から続くシャワーの単調な音に、不吉な響きを感じ取ったのだ。
 長風呂が好きなデュオだったから、バスルームに長くいることは珍しくもない。長いときは、1時間近く出てこない事さえあった。髪を洗えばさらに時間がかかるし、特に忙しい生活をしているわけでもないから、のんびりと入っている方が多い。
 だがシャワーを浴びているならば、当然音は乱れる筈だ。肩に掛けたり背を流したり、そのつど水音は変化する。シャワーを固定して浴びたとしても、本人が動けば音は変わり、ヒイロの耳には不規則な水音が届く筈だった。
 それが、まったく変化なく単調な音で繰り返される時間のリズム。流しっぱなしで忘れられたような水音が、ヒイロの危機感に火をつけた。
 あれほど、デュオを気に留めていたのに・・・。
 心配したヒイロが飛び込んだ、淡いグリーンを基調としたバスルームは、記憶とは正反対に、目を背けたくなる程の赤に染まっていた。


 我に返ったヒイロは、慌てて一歩を踏み出した。立ち止まっていたのはヒイロが感じたよりも、ずっと短い時間だったらしい。
「デ・・・ュオッ!」
 悲鳴のように叫んで、ヒイロはデュオの脈を取る。まだ頚動脈は指で感じられるくらいに動いていた。
 なんとも弱々しく、いつ止まってもおかしくないほどに頼りなかったが、とりあえず生きている現実にほっと息をつく。
「なんて馬鹿な事を・・・!」
 抱き上げた体はぐったりと力なく、ヒイロの腕に動かされるがままである。解けた長い髪すら赤く塗れ、妖しく血の雫を滴らせていた。
 気を失ってずっしりと重い体は、まるで連れ出そうとするヒイロを拒んでいるように感じる。
 後悔の気持ちが渦を巻く。それは戦時中に感じたものよりも、もっと深い場所から吹き出してきた。
 デュオの様子がおかしい、とっくに気づいていたのだ。なのに、こうして後手に回ったことが悔しい。
 だが、とりあえず生きている。
 後悔はもっと後でもいいだろう。今はデュオを助ける事に全力を尽くさねばならない。
 傷口はすぐにみつかった。定番の場所と言えなくもない、手首の動脈だ。
 右手首を大きく切り裂いた傷は、左手に握られた状態で鈍く光るナイフで付けたらしい。鋭い切れ味を誇るジャックナイフは、デュオが3年前から保持しているものだった。
 戦時中も愛用していた、デュオが言う相棒らしい。 ”何度もこのナイフに命を救われた”と、そう言って笑顔を見せたのを覚えている。
 銃よりナイフ戦の方が得意なデュオは、片時もこのナイフを手放さなかった。手入れも手を抜かず怠らず、忠実なくらいで意外性を感じた程だ。
 そのナイフで、この傷をつけたのだとしたら・・・。
 デュオは何がそんなに気に入らなかったのだろう。
 生きていられないと思うほど、この世界が嫌いなのか? それとも自分が生きている事に罪悪感を感じている?
 どちらも違うと分かっていた。デュオは、そんな事に惑わされて命を絶つような奴ではない。 そのくらいなら、もっと早く自殺を図っていただろうから・・・別の何かがあるのだ。
 後悔を殺すように、唇が切れるほど噛み締めた。
 ヒイロはバスルームの奥へ入り、まずシャワーの湯を止める。着替えたばかりのシャツは湯に濡れて張り付き脱ぎにくかったが、なんとか引き裂いたシャツの一部を止血用に、デュオの肘の真下で縛り付けた。
 残りの布で、そっと傷の上の血を拭い取る。拭った瞬間、傷口は新たな血を吹き出させ、際限なく流れてヒイロの心を傷つけた。
 傷口を強く押さえながら、ヒイロは必至でデュオの救命にあたる。
 このまま死なせる気など、毛頭なかった。
 自分たちはこれからなのだ。少なくとも、ヒイロ自身はそう信じている。その中でのデュオのこの行為は、裏切りに感じられた。
 だから―――死なせない!
 死なせて楽になんてしてやらない!! どんなに苦しかったとしても、それは自分たちが受け止めていかなければならない義務だ。
 たくさんの人の命を奪った。 ”戦争だった”なんて言い訳にもならない。
 悲しんだ人はどのくらい居たのか・・・。想像も付かない数の人間が嘆き、命を落とし、呪詛を吐いた。
 それらは、ガンダムのパイロットに選ばれた瞬間に決まっていた事で、他の3人も自分も背負っている。
 デュオだけが逃れるなんて許さない!
 必死の手当のかいあってか、やっとデュオの出血が緩やかになる。慣れた鉄錆びの匂いに、眩むような想いが沸き起こった。それを無理やり押し殺し、ヒイロはデュオを抱き起こす。
 自分が気づくまでに、どの程度の出血があったのか・・・にもよるが、なんとか命を取り留める事はできそうだった。
 とりあえずの止血が済むと、デュオの自室にあるコードレス電話を手に、ヒイロは救急車を呼びかけて・・・動きを止めた。
 ・・・呼んでもいいのか?
 救急車など呼べば、騒ぎになるのはわかっているから、一瞬躊躇った。
 ガンダム・パイロットの自殺―――。
 下手に表に出さないほうがいいのではないか?
 英雄、そう呼ばれていても事実上は、ただの殺戮者だ。ガンダムのパイロットに選ばれた時から、覚悟はしていたが・・・。
 デュオの為に・・・はもちろんのこと、世間で英雄扱いされているパイロットの自殺など、やっと動き出した幼い世界にとって百害あって一利なしだろう。
 青ざめたデュオの顔を、じっと見つめる。ぴくりとも動かない瞼と、少し開かれた唇が痛々しい。
 騒がない方がいい。
 第一、事件が大きくなり過ぎる危険性もあった。売りたくて売った訳ではないが、OZに指名手配されたデュオが一番顔を知られているのだ。
 ただでさえ命を狙われる立場のデュオだ。これ以上のリスクは背負いきれないだろう。
 ガンダムは報復を目的とした、コロニーの意思の象徴だった筈だ。だが現実は違い、デュオは常に命を狙われてきた。あれだけ戦って、闘って、それでも認めてもらえない。
 ”人殺しだから” そう言われれば、ガンダムに乗ったときに負ったリスクだと思えば、しょうがない。乗り切れる奴はいい。自分のように受け止められれば、デュオはこれほど苦しまなくても済む。
 仮にもL2最高のエージェントだったデュオが、こんなにも弱いと知っていて送り出したのか。知らなかったなら、彼らは弱すぎる精神面を隠したデュオの技術だけしか見ていなかった。
 安易に、レベルが高いからと送り出したなら、それは間違いだった。常に隠されていて、きっと誰も気づいていない”死神”は、失敗作なのだ。
 デュオの治療はここでは出来ない。設備のある病院が必要で、しかし騒ぎは起こしたくない。
 暫く考え、結局カトルに連絡を取ることにした。ヒイロが知る限り、この件に関して一番適切な対処ができる人物。彼ならば、事件を表沙汰にすることなく処理することができるし、何よりもこの程度の応急処置だけでは、デュオの命が危険だった。
 血に濡れた指で、記憶の中の直通ナンバーをプッシュする。
 2つ返事でOKしたカトルからの迎えた来るまですることがなくなり、ヒイロはデュオを残したままのバスルームに戻った。
 血に汚れたバスルームは、赤い部分など一割にも満たない筈なのに、妙に深紅のイメージが消えない。
 まるで全体が染まってしまったように、ヒイロの目には赤く映った。飲み込まれそうに奇麗な色で、取り込まれないうちにと目を逸らす。
 がっくりと濡れた床に腰を落として、ヒイロはただデュオの青ざめた顔を見つめていた。
 苦しい、痛い。そんなマイナスの感情など感じていないみたいだ。
 なんというか。
 ほっと一安心したときの表情に似て、まるで死ぬことに喜びすら感じていそうで ・・・安らぎに包まれ、幸せそうにすら見える。
 いつものような表情と違い、何かしっくりくる自然さがあった。死を覚悟した人間だけが持つ、嘘偽りのない顔だ。
 それほど、デュオにとって生きる事は苦痛だったのだろうか・・・。
 所詮、他人でしかないヒイロには理解できない。
 シャワーの湯気が濃く残るバスルームは、ふんわりと暖かかった。人の温もりに包まれる時のようで、手放したくない暖かさ。
 デュオは、何を望んでいるのか?


 AC195年は、戦いの中で始まって終わった。
 初めて俺がデュオに出会ったのは、195年戦争で・・・見事なまでに最悪の出会い方だった。
 銃口を突きつけたデュオと、撃たれた肩を押さえる自分。それは相手を敵かもしれないと認識した瞬間でもあっただろう。
 思い出したくもない戦争の中で、もっとも生きることに意欲をみせたのは―――
デュオ。そう、他でもない彼自身だった筈なのに、なぜ今頃になって助かった命を捨てようとするのか。
 トロワはすべてを受け入れる事で戦いを乗り切り、五飛は死を負けだと認識し、カトルは生きてこその価値を知っている。
 俺は・・・死ぬタイミングを失って、つい生き残った。いや、違う! 俺は―――、生きていたかったんだ。
 195年戦争の最後に、デュオは俺に「好きだ」と告げ・・・俺は死にたくないと思った。それがなければ、とっくに命を投げ出していただろう。戦いの最中には、死ぬことだけを考えていたのだから。
 純粋に、生きる事だけを望んでいたのは・・・デュオなのだ。生き残った時にも、デュオはこんな弱さを決して見せなかった。それどころか、生き残ったことを一番喜び、嬉しそうにしていた筈だ。
 5人のパイロットの中で、精神的に一番強いのはデュオだと思っていた。他の誰より世の中の矛盾を知っていて、それを乗り越えられる力を持っている・・・と。
 気づいてしまった弱さは、デュオにとってどんな影響を与えたのか?
 戦争の中で一番笑顔を見せつつ、きっと誰よりも傷ついてきたのだろう。それなのに、デュオは決して笑顔を消さなかった。
 その笑顔の意味は?
 誰もが謎を持っている。 
 そして・・・誰もが謎の鍵を教える事はない。


 青ざめた唇は、微かに呼吸の為に開かれている。血塗れのデュオの肌は、死人と見間違うばかりに白く抜けるような色で、ヒイロの不安をかき立てた。
「デュオ・・」
 答えがないのを承知の上で、ヒイロは小さく独りごちる。
「・・・何を、望んでいる・・?」
 バスルームに反響するヒイロの声に重なって、来訪者を告げるチャイムの音が室内に響いた。

                                         To Be Continued....

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