W2×1　【MiyabihimeA】

「暗視ゴーグルは支給したか？」　
　レディの心配に、トロワが支給物資の一覧を差し出す。
「大丈夫だ。蛍光塗料も支給している」
　目印用のペイントも合わせ、様々な支給品リストに彼女の表情が和らいだ。だが、ある項目に引っ掛かって疑問が浮かぶ。
「・・・・これは何だ？」
　指差された先を見つめるガンダム・パイロット３人の脳裏を過ぎったのは、”おそらく・・いや、間違いなく申請したのはデュオだろう”という結論。
「・・デュオだ」
「間違いないね」
　頷き合う３人を他所に、レディは小首を傾げるだけだった。

「予想通りだな」
　暗くなった空を見つめ、デュオは嬉しそうに装備品を並べ始める。懐中電灯や火薬、携帯食料に並んで取り出されたのは、１箱の煙草だった。取り出した煙草を咥え、ライターで火をつける。
　目印になる筈の火を灯し、デュオは煙草を木の上に固定した。
　飛び降りてから確認し、満足そうに笑う。
「雨が降る・・・・ならば、先手必勝ってね」
　濡れるのはキライなんだよな・・・。自分勝手なことを呟きながら、茂みの陰に身を隠す。そのまま姿を消した。
　周囲で乾いた銃声が聞こえる。花火のように軽い音と、胸や顔に咲いた赤い花・・・・さすがに実弾は危険なので、ペイント弾を使用していた。おかげでケガ人の心配は減るが、真っ赤なペイントだらけのゾンビが歩き回るシュールな光景が繰り広げられた。
　一応心臓と顔は致命傷とされ、ケガも３ヶ所以上になると死亡と見做される。死んだメンバーが集まる”通称・死体安置所”こと”訓練時死亡認定者待機所”まで、ゾンビの列が出来始めた。
「ヒイロは各個撃破に出たのか・・・」
　どうみても、黒の死体が多い事実に眉を顰め、デュオは自分が量産した白の死体を数える。
　空を見上げれば、泣きそうな表情ながら涙を零すには時間がかかりそうだった。
「おい、全員ＡＰ８７ポイントへ集合」
　インカムから指示を送り、デュオは己が指示した場所へ走り出す。
　突出して先行していたデュオの背後に当たる地点へ集まるだろう８人程の、どれだけが無事たどり着くだろうか。ヒイロが取った各個撃破の戦法なら、５人たどり着ければ御の字と判断し溜め息を吐いた。

　がさりと草を掻き分ける音に、反射的に銃口を向けて引き金を引く。当たった男の即頭部は真っ赤に染まり、舌打ちした彼にヒイロは微笑を残して走り去った。すでに４人を沈黙させたヒイロだが、肝心のデュオにぶつからない。彼が先行していたのは、陣形から考えても間違いないだろう。
　ならば、彼と擦れ違ったのか？
　背後を窺うが、どの銃声がデュオの物か判断できなかった。普段の愛銃ならともかく、支給のペイント弾用制式銃は音が同じなのだ。一度深呼吸したヒイロの鼻を、嗅ぎなれた香りが擽る。
　・・・・・神酒（ソーマ）？
　煙草の臭いだと思い至り、頭上を見上げた。煙草の火に向かい銃を構えるが、すぐに下ろした。気配が感じられない。デュオならば気配のひとつも消して見せるが、さすがにこの距離で見逃すほどヒイロは鈍くなかった。
「・・・・紛らわしい」
　舌打ちして走り抜ける。しかし周囲に漂う甘い香りは強く、ヒイロの感覚を乱した。
「策ばかり弄するヤツだ」
　五飛あたりなら怒鳴り散らすだろう。思って表情が和らぐ。少し開けた場所で、周囲の暗さに天を仰いだ。姿を隠した月の女神に唇を噛み、湿っぽい空気に目を細める。
　・・・・雨が近い。
　ヒイロの黒髪に、ぽつりと雫が落ちた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....

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　雨の予感・・・そのまま雨の予兆にしてしまいました。
　この先、どんな展開になるのか・・・まったく考えていません。大丈夫なのか？　まとまるのか？　そもそも、プロットなしで書くなんてバカじゃないのか？　そんなツッコミを入れながら、今日も頑張りました。

【拍手コメント返信】もるもっち様・・・今までと違う雰囲気で書き進めています。なぜか？←何も考えなかったから（苦笑；　ちなみに、綾雅はチェスできないので・・・駒の動かし方なんて知りません！←バカ；
　猫ってにゃんこ様・・・お久しぶりです。愛猫ユイ写真は近々ＵＰしますです、ハイ・・・；
　sayokoしゃま・・・・コメント久しぶりでしたので、驚きました。あ、それと今日届きました。ありがと♪　しかしエジプトのガラス香水ビンを集めてるって、よく知ってたね。昔話したっけ？　なんにしろ、コレクションが増えました。嬉しいです♪　あとでお礼メール送るね～！