W2×1　【MiyabihimeA】

　疑問ですらない言葉は、冷たい声に凍り付いてデュオに突き刺さる。ぐっと喉に声を詰め、咄嗟に言い訳しようとしたデュオの口は、結局何も言えなかった。顔を上げた瞬間、見下ろすヒイロの蒼い瞳に魅了されたのだ。
　何度見ても・・本当にキレイだよなぁ・・・。清廉潔白そうで小悪魔な性格も、透明で澄み切った心も、美しい外見も―――こんな魅力的な人間は他にいない。心の底からそう信じているデュオは、うっとり目を細めて恋人に見惚れた。
　コツンと頭を叩かれ、我に返る。
「ちゃんと届けましたよ、デュオ」
「サンキュー、カトル♪」
　笑顔で礼を言えば、魔王のごとき迫力で満面の笑みが返ってきた。咄嗟に引けた腰は、本能に忠実なのだろう。感じた恐怖は、とんでもない提案で確証に代わり、やがて彼の言葉は”命令”なのだと知らされた。
「どういたしまして。今日から３日間を作曲に充ててください。なお、今回のアルバム収録曲は１５曲、そのうちシングルカットされた３曲を除いて１２曲を新曲で埋めます。収録は４日後からで、すでにレコーディングルームは確保しました。くれぐれも”曲が足りない”とか”間に合わなかった”なんて事態は避けてくださいね」
　一気に言い終えたカトルに、紅茶を淹れていたトロワが顔を上げる。
「１日４曲か。アレンジはぎりぎり間に合うだろうが・・・」
「絶対に無理ッ！」
　トロワから受け取った紅茶に口をつけ、優雅に一口楽しんだカトルは水色の瞳を伏せた。
「デュオ・・・本当ならヒイロのスケジュールは忙しいんです。大変な損失とクレームを覚悟で、不可能な時間を捻出した僕に対して、まさか無理だなんて言いませんよね―――マスコミの目を誤魔化してヒイロを連れ出し、ここまで連れて来るのにどれだけ苦労したと思いますか？　それを”たかが１２曲の作詞作曲”くらいで根を上げて、やる前から降参するとは・・・」
「はい、すみません。頑張ります」
　がっくり肩を落としたデュオの優等生発言に、カトルはにっこり笑った。
「では、予定通りレコーディングできるようにお願いします」
　僕はこれで・・・あっさりと部屋を後にするカトルを見送り、くすくす笑い続けるヒイロがトロワから紅茶を受け取る。礼を言って口をつける恋人の隣で、拗ねてソファに懐くデュオに、トロワが最後の止めを差した。
「コーヒーを用意するか？」
　先ほどの我が侭を揶揄るトロワは、結構腹に据えかねていたのかも知れない。
「・・・・・・紅茶で結構です」
　作詞はともかく、作曲はトロワにも手伝って貰える。アレンジ１２曲に加え、２～３曲は任せても大丈夫だろう。そうでなければ、間に合わなくて大目玉を食らうのは確実だった。そんなパートナーの機嫌を損ねるような我が侭を控え、デュオは上質な肌触りのソファに撃沈した。

「彼女を使いましょう、手配を・・」
「かしこまりました」
　頭を下げた秘書を見送り、タレントの写真が入ったファイルを放り出す。ウィングをデビューさせる為の会社だが、テレビ局や他のプロダクションに睨みを利かせるには、多少のタレントが必要だった。レコーディング会社であり、自社のプロダクションも所有し、その上海外のテレビ局を３社買収している。その実績とウィナーの名で、逆らうマスコミは封じてきた筈なのに・・・。
　忌々しさに雑誌を睨みつける。週刊誌の表紙を飾る文字は、間もなくウィングから人気女性タレントの不倫疑惑に摩り替えられるだろう。そう手配し、スケープゴートとなるタレントを選んだのは、カトル自身だった。
　最悪、その女性タレントが潰れても後釜は育てている。ウィングを守る為に、会社が存在するのだから・・・。
「あとは・・・ウィングの仕上がりが順調なら・・・・問題はありませんね」
　ヒイロが、ちゃんとデュオの手綱を握れるといいんですが・・・。
　１２曲の新曲を楽しみに、カトルは水色の瞳を細めた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....

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　くはっ、デュオは見事に尻に敷かれてますね・・・でも、我が侭大王だから・・・周囲が苦労しそう；
　１２曲の新曲を３日間って・・・現実では不可能っぽい。デュオがヒイロという活力を得れば、そのくらいクリアして貰わないと・・・だって、ヒイロへのラブソングでしょ？　本人目の前にして作れなかったら、それは愛情が足りない・・・と（苦笑
　五飛がアクション俳優に関して、結構「拍手コメント」いただきました。近々、絶対に登場させます！！！