W2×1　【MiyabihimeA】

　戦時中に顔を晒した以上、狙われるのは覚悟していた。あれは完全なる自分のミス―――言い訳のしようがない失態だ。ガンダム・パイロットの名を冠する５人の中で、唯一公開されてしまったデータは、もう取り返しがつかない。
　だからスイーパーから距離を置いた。プリベンターに所属しなかったのも、同様の理由だ。この身は敵を招きよせてしまう。なのに、ヒイロから離れられない―――多大なる矛盾。自覚はあっても、奪われる恐怖を感じていても、ヒイロの隣にいたいと願うのは・・・最大の罪だった。

　熱が下がった翌日、プリベンターへ報告と事務処理に出向くヒイロを見送り、軽く室内を見回す。愛用の銃をベルトに挟むと、珍しく帽子を手に取った。三つ編みを中に押し込んで被れば、その姿は別人のようだ。特徴となる三つ編みを隠し、珍しい青紫の瞳をサングラスで覆った。上着を羽織らずに掴んで肩にかけると、鼻歌を歌いながら部屋を出る。
　先日片付けた連中のあまりの手ごたえのなさに、不審に思ったデュオが調べた結果・・・彼ら以外にも敵がいるとわかったのだ。狙撃された時の腕のよさを思い出せば、まだ敵は残っていると判断するのが確かに正しい。
　歩き出した先で、見慣れた後姿に首を傾げた。レンガの壁に寄りかかっている青年に近づいて、知っている押し殺した気配に目を見開く。
「ヒ・・・ィロ？」
　掠れた声に振り返った恋人は、不機嫌そうに溜め息をついた。
「遅い！」
「ああ、ゴメン・・・って、別に待ち合わせじゃないし・・・」
　記憶を浚ってから返答すれば、呆れたとゼスチャーで示してくる。ヒイロと歩調を合わせて歩きながら、デュオは内心で焦っていた。今日は残っている敵を一掃するつもりでいたのだが、このままだと計画を変更しなくてはならない。
　そわそわしているデュオの腕に、さりげなく腕を絡めたヒイロが意味ありげに見上げた。
「・・・・お前が隠していることくらい、知っている」
　敵を掃討するんだろう？
　そう告げる蒼い瞳の強さに、気圧されたデュオが頷いてしまう。しまった！　と思うが、時すでに遅し。取り返しがつかない。
「でも危険だからさ・・」
「なお更、１人では行かせられない」
　一言で抵抗をそぎ落とされ、それでも何とかヒイロと別行動になりたいデュオは言葉を探す。珍しく言い負かされている男に、ヒイロはにやりと笑って手を引いた。
　誘い込んだ裏道を、ヒイロは迷うことなく案内する。素直に歩くデュオが足を止めるのと同時、ヒイロもぴたりと止まった。顔を見合わせた直後に足元で甲高い音がする。
　　キンッ！
　ライフル弾特有の甲高い着弾音が響き、デュオの腕がヒイロを抱き込んだ。一番近くの壁に背を預けて、角から奥のビルを探る。背にしている壁の角を曲がって、斜め向かいのビル屋上だろう。敵の狙撃地点を推測したデュオが目を細め、気配を消した。普段は互いの緊張を防ぐ為に残している微かな気配も、相手を殺そうとする殺気も、何もかも消滅する。伸ばした手がベルトから銃を抜き取り、片手で安全装置を解除して握り締めた。
　銃の冷たく硬い感触に安心する。
「ヒイロは下がって・・」
　声をかけて振り返れば、そこにいる筈の恋人の姿はなかった。黒髪を捜して視線を彷徨わせれば、いつの間にか回り込もうとしている。ビルの谷間を走り抜ける恋人の後姿に、デュオは叫びそうになった口を慌てて押さえた。
　ちらりと視線を寄越してから、ヒイロは狙撃手のいる隣ビルから外階段を上り始める。叫ぶ為に吸い込んだ息を、思いっきり吐き出した。ヒイロを危険な目に合わせるのは嫌だ。ならば、ヒイロが上りきる前に敵を殺すしかない。
　深呼吸して、敵の目を引く為に路地から飛び出したデュオの目に映ったのは―――鮮やかな真紅だった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 To Be Continued....

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　あははっ、また痛い話になりそう（汗
　歌詞に合わせて、少しずつ進めていますが・・・分かりづらいかも。というか、今日沢山書きすぎて疲れた（自爆